必然は偶然、偶然は必然 第十九話

「そうでしょう?貴方は色々と見誤った。俺の事も、リグレットの事も。それは全てあんたが自分の思い込みを変えようとしなかったからだ」
「私の、思い込みだと・・・?」
「そうだよ。あんたは自分が何もかも知ってるつもりでいたんだろ、第七譜石に詠まれた預言だったり預言に苦しむ事になった人と苦しみを共にして事に挑んでいるって思ったことでな・・・けど結局あんたがやったことってただ自分の言いたいことだけ言って、相手の事を全く分かってなかった自己満足でしかないんだよ」
「!・・・私が、自己満足で動いていただと・・・!」
戦いの手を少し止めルークの声に耳を傾けるヴァン。だがその中身が明らかにお前は愚かだと告げているような中身に、自身が見下していたこともあってルークの言葉に更にヴァンは静かに怒りを浮かべる。
「否定したいんですか?なら答えてくださいよ、なんでアッシュがあんたを裏切ったのかって事をさ」
「っ・・・アッシュは裏切ってなど・・・」
「アクゼリュスのセフィロトでの事、忘れてないですか?あの時登場したアッシュはあんたのやろうとしてることに反発しに来たんだけど、それって裏切りなんじゃないんですか?あんたが手塩にかけて育てたはずのアッシュが、あんたの妄執に付き合いきれないってね」
「くっ・・・黙れレプリカ風情が!光龍槍!」
「おっと」
それで今度はアッシュの事を引き合いに出すルークにヴァンは反論しようとするが、すかさずそう出来ない確かな論理で返され光龍槍を放つ。だがルークは全く動揺することなく、涼しい顔で横に避けた。
「正解言われたからってムキになるのは大人げないですよ、センセイ?」
「黙れと言っているのが分からんのかレプリカ!」
‘キィンッ!’
そして余裕たっぷりな笑みを向けられて返されたことにヴァンは落ち着き払った顔など微塵も見せず怒りに昂り剣を振るうが、ルークはあっさりその剣を受け止める。
「・・・いい加減にしろ、ヴァン!いつものお前は・・・!」
‘ズムッ’
「ぐぁっ・・・!」
「隙だらけだ!」
たまらずそんな姿にラルゴは叱責の言葉をかけようとするが、その瞬間踏み込んだセネルの強烈なボディーブローに苦悶のうめき声を上げ言葉が止められる。



・・・ラルゴの言ったようヴァンがらしくない理由、それはペースを終始ルーク達に持っていかれた事が大きい。それはこの戦いが始まってからではなく、その中には謀らずもリグレットにアリエッタまでもがこちらに付いた事も理由にある。

ヴァンからしてみればアッシュの反抗心はある程度予測はしていただろうが、リグレットにアリエッタが揃って寝返るとは思ってはいなかっただろう。特にリグレットはヴァンからすれば右腕のよいな存在と自他共に認めるような人物であり関係性であったことから、それが覆された事はヴァンにとって内心は混乱及び困惑があったことだろう。何せろくに訳も聞かないまま敵対することになったのだ、気にしてないと装う傍ら心のどこかで気になっていたはずだ。

まぁ二人が寝返ったのも相まってルーク達が揃ってヴァンの思惑を越え、一気に反旗を翻したというのが一番の理由だ。ヴァンからすれば思い通りにならないレプリカごときがという怒りもあるのだろうが、それ以上にルーク達を操らねば預言通りにいかせてるように見せられないという焦りも付随している・・・そんな時に現れたルークが自身の思い通りにけしてならないことを知り、尚且つこれからの計画に必要なアッシュがいないと知ったならその心中は計り知れない物であろう。

・・・元々からしてヴァンはティアと血の繋がりがあることから分かるよく似た特徴を持っている、基本的に自分のやることや心中を人に話すことを好まないという特徴を。そしてそれは例え仲間であるはずの人物でもだ。内心でグルグル回る様々な考えの中、更にルークの罵倒にも等しい言葉の数々・・・おそらくもう少しヴァン側にとって有利な状況だったなら多少はマシだっただろうが、こんな不利な状況に追い込まれた現状では心を乱されるのはある意味で当然の事と言えた。



(・・・このブラウンパイナップル、こんなに動揺しやすかったっけ?)
・・・戦ってる当の本人、ルークが内心で首を傾げる程に。












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