必然は偶然、偶然は必然 第十九話

「いえ・・・では早速出発いたしましょう。準備はよろしいですか?」
「はい、では行きましょう・・・ワイヨン鏡窟に」
フリングスはそんな声に気にしないようにと首を横に振り出発したいと準備がいいかと口にすれば、イオンがしっかりと頷く・・・ワイヨン鏡窟に決着をつけに行こうと。
















・・・そして一同はマルクトの船に乗り、ケセドニアを出港した。アルビオールは説明をフリングスからギンジにしていたため、ワイヨン鏡窟に着く時間を見合わせて後で来るということになっている。

そんな状態で船としては高速で目的地に向かう訳だが、やはりアルビオールではない分時間は否応なしに取られる。しばらくの時間、ルーク達は船に揺られる事になった。



「・・・やはり決意は変わらないのですか?ルーク様、イオン様・・・」
「あぁ・・・フリングス少将には悪いと思うけどな・・・」
「すみません・・・ですが、これは僕達がやらなくてはいけないことなんです・・・」
・・・そんな中で甲板にてフリングスと対峙するルークとイオンの二人。フリングスの表情は苦く固いが、そんな表情に難色を示しつつも二人は引かないと告げる。
「・・・いくら皆様のお連れする方々が強いとは言え、残りの六神将の二人にヴァン謡将をお任せするというのは危険です・・・と言っても、お二人は譲るつもりはないのですね?」
「あぁ」
何故そんなことになっているのか?その答えはヴァン達と戦うのは自分達だとルーク達が言ったから。その心変わりを望むフリングスの確認の声に、ルーク達は強く真っ直ぐな視線で返す。
「マルクト軍としてフリングス少将達のやるべきことを取ることは済まないと思っています・・・けど彼らを倒すことは僕らに任せてください。その上で貴殿方には神託の盾の露払いをお願いしたいのです。私達が先に進むために」
「・・・決意は固い、という事ですか・・・分かりました、出来る限り皆さんの負担を減らすように神託の盾を食い止めたいと思います。ですがダメだと思われたら躊躇せずに我々の元に戻ってください。後は我々が引き受けますので・・・いいですね?」
「はい、わかりました。お心遣い、感謝します」
それで話をイオンが引き継ぎやってほしい行動を具体的に上げればフリングスもようやく観念するが、危なくなったら逃げるようにと言い含めた条件つきで返す。その気遣いにイオンは頭を下げる、自分達を心配してくれた上で最大限の譲歩をしてくれたことに。















・・・そんなフリングスとのやり取りをした後、ルーク達は決戦に向け静かに船内で休息をすることになった。そして数日が経ち・・・いよいよ船はワイヨン鏡窟へと辿り着いた。



‘ワ~~~・・・ッ!’
「・・・向こうに謡将に六神将の姿はなし・・・よし、総員戦闘配備!我々はここで神託の盾を迎え撃つぞ!」
「「「「はっ!」」」」
それでワイヨン鏡窟の船着き場に船を着けたのだが、以前のように神託の盾の船も同じように停泊していた。そんな状態でなに食わぬ顔で船を船着き場につけルーク達が船から降りてようやく神託の盾も敵と見なしたのか、鏡窟の奥からであったり船からであったりとぞろぞろと動き出した。そんな姿を見て冷静に状況を判断してフリングスは指示を出し、周りも一斉に答える。



・・・これは一種の奇襲だった。

自身らに見覚えのない船が近付いてくる、見張りの神託の盾からすればどうするべき物かと思うだろう。ここで砲撃の一つでもあったなら即座に神託の盾も応戦のしようもあっただろうが、ワイヨン鏡窟はキムラスカの領土。下手に攻撃を仕掛けキムラスカの怒りを買えば危ない、神託の盾からすれば何の為の船なのか分からない事が攻撃を躊躇わせる一手となった。そして敵からの攻撃が来ない内に敵の懐に入る事が出来れば成功、という訳である。

・・・やろうと思えば神託の盾の船に致命的な一撃を先に当てる事も可能ではあった。しかしそうしなかった理由はあくまでルーク達がヴァン達との決着を自分達でつけることにこだわるが故である。その為にあえて船から攻撃はせず堂々と懐の内に入り込んだのだ。確実に自分達の手で決着をつけるために意表を突く形で。







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