必然は偶然、偶然は必然 第十九話

・・・そんなルークとイオンが二人で酒場に行っていた時と同時刻。酒場の前に二つの姿があった。



「・・・どうやら少しの間、二人は飲むみたいだ」
「そうか・・・」
・・・酒場の窓から外で二人を覗いていたウッドロウ。それで笑顔を見せ振り返るウッドロウにリグレットもどこか安心した様子を見せる。
「・・・いきなりルークを探したいからと外に出たかと思えば、共に酒を飲むとは・・・少々緊張感に欠けるのではないか、二人とも?」
「いや、いい兆候だと私は思うよ。下手に気負うよりは遥かにいい」
「何?・・・お前の言うことを聞いていると、私が無駄な心配をしていると言っているように聞こえるのだが・・・」
「そうは言っていないよ。彼らには彼らなりの想いがあり、明日に残さない程度にはやっていると私は見ている。それを明日に残るのではないかと心配するのは君の自由だ、私は君の事を咎めてはいないよ」
「・・・かなわないな、お前には」
それでリグレットから出てきたのは弛んでるんじゃないかといった愚痴に似た声が出てくるが、ウッドロウからたしなめるようでいて個人の意思を尊重するとの言葉を返され自嘲するような笑いを浮かべる。だがその笑みはすぐに複雑な想いのこもった表情に変わって、ウッドロウに向けられる。
「・・・ウッドロウ、お前はどちらに行くのだ?」
「・・・どうしたんだい、急に?」
「いや・・・元々お前はこのオールドラントに預言に染まらない治世を施しに来たと言っていたからな・・・それでルークと導師、二人はキムラスカとダアトで分かれる以上必然的にお前はどちらかにしか行けないという事になる。だから聞きたいのだ、お前がどっちに行くのかと言うことを・・・」
「・・・成程」
それでリグレットから向けられる全てが終わった後のキムラスカかダアトか、どちらに行くかと真剣ではあるが弱く伺うような問い掛けにウッドロウはそういうことかと頷く。



・・・元々ウッドロウがこのオールドラントに来たのは、預言に頼らずより良い治世をするための手助けをするためである。そしてその対象はルークとイオンの所属するキムラスカとダアトだが、ウッドロウの体は一つ。どちらか片側にしか行けないのは自明の理であった。



「・・・まぁそれは考えていない訳ではないよ。ただどちらに行くかと言うのは二人に話してから、になるかな。こればかりは私が勝手に言っていいものではないからね」
「・・・そうか・・・」
そんな疑問にウッドロウは二人の意志の確認をしてからだと答え、リグレットは少し残念そうに声を上げる。
「ただ・・・ここで草案の段階になるが、一つ考えている事がある。それがうまく形になって実現すれば、ダアトはキムラスカとマルクトとの垣根が無くなる可能性があると思うよ。そして統治に関しても二人の負担が少なくなると私は考えている」
「何・・・そんな案があると言うのか?」
だがそんな姿にウッドロウは自身の考える案次第でこれから先の展開にかなりの展望が望めるとあえて空気を律して言えば、リグレットはすぐに立ち直り興味を示す。
「少し私なりに全てが終わった後の事を考えてみてね、その時に一番立場が微妙になっているのはダアトだと思ったんだ。現に二人が見てきた未来でもダアトの立場は微妙なものだったらしいからね」
「・・・まぁそれは容易に想像がつくな。預言がなくローレライ教団が教団として機能しなくなったなら、ダアトの役割という物が無いも同然だと言えよう」
「事実そうだったらしい。今まで求められてきた役割が無くなったのだから最初の3年こそは持ちこたえてはいたようだが、領土も広くなくて特産品もあるとは言い難い状況だから次第にティア達が崩れ始めた辺りから人が離れていったとのことだ・・・これからの世で預言は詠まなくなる、そうなればダアトの立場をまた危うくしかねないからね。そうしないために考えたのだよ」
それでウッドロウがかつての未来でのダアトの惨状を匂わせる話を始めた事にリグレットも想像して納得して頷き、その再来を食い止める為に考えたと告げる。






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