必然は偶然、偶然は必然 第十八話

「・・・ちゃんとした返答は無し、か。あ~あ、やっぱ期待するだけ無駄だったか、まともな返答を求めるなんて」
「っ!・・・クソッ、クソッ、クソッ!なんでお前みたいな屑に見下されなきゃなんねぇ!?俺はお前みたいな屑なんか比べるまでもない程に優秀なはずだ!なのに何故・・・!」
「ルークより貴方が優秀?・・・フフッ。笑わせてくれますね。向上心を持ちもしない貴方にルークが劣る道理はどこにもありませんよ」
「っ!?向上心、だと・・・っ!?」
ルークはそんな姿に冷たく言葉を吐き捨てるように向ければ、アッシュは正論かどうかなど関係無くただルークに対しての怒りを口にして睨み付ける。だがその一因を向上心と微笑を浮かべ告げるイオンに、アッシュはどういう事だと動揺し視線を向ける。
「屑だ屑だとルークの事を言っていますが、貴方はそうやってルークに限らず人を見下す以外に行動をしていませんでした。そしてレプリカの立場というルークの足元しか見なかった貴方ですが、そうなれば当然見える視線は下以外にありません。ですがルークは下だけでなく前も上も見てきました。それは貴方が見てきた景色などと比べ物にならない程の多くの物です・・・分かりますか?向上心を持たず足元だけを見て見識を広めずに人を認めようとせずにいた貴方と、現実を受け入れ下だけでなく前も上も見てきたルークでは当然違うんですよ。成長の度合いが・・・いえ、ルークと比べることすらおこがましかったですね。ヴァンに連れられダアトに来てルークへの恨みを糧にした貴方が成長したのは、精々その体くらいです。その精神に思考回路はむしろファブレ邸にいた時より貧弱になっているんじゃないんですか?何せ実年齢が七歳のルークに追い抜かれたのですから」
「!!!・・・導師ィィィッ!!」
「ふっ!」
‘ズムッ!’
「がっ・・・っ!?」
‘ドサッ’
そんな視線にイオンはとうとうと語った、いかにアッシュがルーク以下の存在であるかを明らかに馬鹿にして見下した声で・・・その声にアッシュは即座に激昂してイオンに向かい走り出すが、横から飛び出たセネルがカウンター気味にボディブローを放ち、拳が腹にめり込んだ事で顔の穴という穴をかっぴらいて地面にアッシュは倒れ込む。
「何ですか?痛い事実を突かれたから暴力に頼るなど、子供のやる行動以外の何物でもありませんよ。そんなことですから貴方はルークに追い抜かれるんですよ、言葉を使うという事を知らないんですからね」
「・・・導、師・・・っ!」
その姿を見下ろしだからダメなんだと更に言葉を重ねるイオンに、アッシュは息も途切れ途切れながらに上を敵対心を持った目で見上げてくる。



・・・そもそもの事を言えば、アッシュの性格に考え方が変わらなかった事・・・これがあったからこそかつての未来において余計な犠牲に手間が出たのだと、今のルークとイオンは考えていた。

アクゼリュスの時は自身が本来滅ぼさせられる立場にあったにも関わらず、安いプライドを重視してルークへの協力という選択肢を放棄し結果としてアクゼリュスを滅ぼした責任を全く感じていなかった。ヴァン達を追う時や必要な情報が欲しい時など自分の都合のいい時にしか交流をしてこようとせず、結果として合理的に事を進めるには遅れも生じた。そしてルークが変わっていったことを受け入れる事が出来ず、勝手に暴走して最後は死に・・・ルークの体を乗っ取って生き延びたにも関わらず、キムラスカに戻ってやったことは混迷の状態を作り国を陥れた。

・・・代表的な事を上げるだけでも問題なのだが、ここで重要なのは馬鹿は死んでも治らないを体現したかのよう自身の考え方を一切変えずにいたことだ。

言ってみれば軍属の人間の考え方と玉座に座る人間の考え方は違うべき、いや違わなければならないのだ。長い間神託の盾にいて軍のやり方に染まっていたアッシュでは王族としての考え方にシフトチェンジするのは難しかったのであろうが、それでも王になったのだから考え方は改めてしかるべきだったのだ。神託の盾時代で学んだその我を通す強引なやり方を・・・これはナタリアの後押しがあったからというのもあるのだろうが、結局はアッシュがそう出来なかった事が器の質の低さを露呈していた。王になるだけの器ではなかったということを・・・そしてそれが二人の失望に怒りを買う理由だった。







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