必然は偶然、偶然は必然

『・・・マルクトの瓦解も本格的に始まるな』
『ガイやジェイドじゃあピオニー陛下みたいにうまくは出来ないよな』
『そうですね』
ポツリと呟いたローレライに同調するのは、三十年前にその命を散らした二人、ルークとイオン。彼ら二人はローレライの好意によって音譜帯に魂を連れて来てもらっていた。
『死ぬことは間違いないって分かってたから仕方ないって思ってたけど、こんな結果を残されたらまだ世界が滅んだ方がマシだったって思うよなー』
ルークは本来ならアッシュとの大爆発により融合を果たすはずであったが、ローレライが手を尽くして魂を大爆発から救ってもらった。
『ええ、まさか僕もこんな風になるとは思ってもいませんでしたよ』
イオンはティアの障気を引き取った後、魂だけの存在として全てが終わるまでルーク達を見守っていた。そしてローレライ解放の際、ルークの側にいたイオンはルークと共にローレライに音譜帯に連れて来てもらっていた。



『・・・そなたらは彼らに情を持っていたのではないのか?』
そこに二人の仲間達に対する扱いの悪さをローレライが聞く。
『いや、ちょっと最近あいつらとの旅の時間を思い出してな・・・』
『今思えば僕たちって彼らにちゃんと言葉にして言えなかっただけで、実は彼らに情はなかったんだってルークと僕は気付いたんですよ』
・・・彼らも音譜帯に来てから三十年もの月日を過ごしてきた。そこまでの時間をただ無為に過ごして来た訳ではない。世界情勢が悪化していく中、最初二人は彼らがこのような愚かなことを続けるはずがない、すぐに間違いだと気付いて方向修正するはずだと信じて疑わなかった。しかしその想いに六人が六人全く答えることはなかった。
『で昔のこと思い出してったら、俺らってレプリカとかアクゼリュスのこと抜きにしても結構蔑ろにされてたんだよな』
『だからその時のことを思い出していったら気付いたんですよ。彼らに僕たちは合わせていただけだって』
時が経った今、二人は確実にあの時の自分の本音を理解していた。‘あぁ、自分は彼らのことを嫌いだったんだ。あの時はただ合わせていただけだったんだ’と。彼らは三十年という時を音譜帯で過ごしてきた事で、それに気付いたのだ。



『・・・そうか』
実際にこの状況の原因は六人にあると見ているローレライも、ここまで言う二人に敢えて突っ込むまいと曖昧な一言を返す。そのかわり、ローレライにはある考えが生まれていた。
『ルーク、イオン。そなたらはこの世界の現状を変えたいとは思わんか?』
『いきなりどうしたんですか?ローレライ。僕は変えれるなら変えたいですけど・・・』
『俺もイオンと同じだけど、今俺ら死んでるのにどうやって変えるんだよ』
二人の意志を聞いたローレライはこれならいけると確信し、新たに始まる運命の言葉を放つ。



『そなたら二人は今から過去に行ってもらう』








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