必然は偶然、偶然は必然 第十八話

「・・・そう理解していただいた上でお伝えします、貴方に下された処分を。そして同時にガイ=セシル、でしたね。貴方にもこちらから勧告を送りたいと思います」
「えっ・・・!?」
そんな姿にフリングスはいよいよ処分を下すと言うが、そこで話の流れで自身の名がいきなり出てきたことにガイの表情に驚愕が浮かぶ。
「ジェイド=バルフォア。貴方はこの後はグランコクマに行ってもらい、牢獄に入っていただきます。拒否権はありません、陛下の信頼を裏切り信用を貶めたその罪・・・しっかりと償っていただきます」
「・・・はい」
まずはと妥当に牢獄行きの処分を告げるフリングスに、ジェイドは反論をするような素振りを見せずただその言葉を受け止める・・・もうここまで来ては口先八丁で乗り切る事も出来ないと理解したのだろう、ただ静かだった。



だがここで予想外の事を告げられたガイは、ジェイドとは対称的に表情がうるさく揺れていた。
「そしてガイ=セシル。貴方がファブレ家より粗相をしでかしてルーク様より不興を買ったことはこちらも重々承知しています。その上ファブレ公爵より直々の処分を言い渡す書状をもらったこと・・・これは到底誉められた事ではありません。キムラスカの人間である貴方にマルクトから手を下すことはありませんが、もし職を求めマルクトに移住するにしても貴族及び軍の関係の者のいる場所には職はないと思っておいてください」
「なっ!?それは、何でですか!?」
「ルーク様にファブレ公爵の失意を買ったことによるものからです。こちらとしましては例え別の国とは言え貴族の不興を買ったものを召し抱えるなどと言った事はしたくはありません。再度同じことをしない保証はありませんからね・・・ですので貴方の名前に身体的特徴はマルクトの貴族と軍には達しをします、けして貴方が来ても絶対に雇うことがないようにと。ただこれは既にピオニー陛下にも話は通っていますので、もうマルクトの主要な所には貴方の情報は行き渡っているでしょうね」
「っ!・・・そんな・・・!」
そんな状態のガイにフリングスはハッキリと告げた、マルクトに来ても貴族に軍関係では働くことは出来ないと・・・その処置にガイはたまらず何故だと叫ぶが、ファブレでの所業のせいだと言いつつ達しを渡すとフリングスが言ったことでその表情からサッと血の気が引いて青ざめた物へと変わっていた。
(おーおー、流石に気付いたか?状況のまずさに)
・・・そんなガイの姿を見てこの状況を仕組んだ張本人であるルークは、その光景にそっとほくそ笑んでいた。



・・・ルークは過去に戻ってきてから考えた、いかにすればガイを英雄にさせないようにもだがガルディオスに戻さないようにするのかを。そんなことを色々考えていく内にルークは一つの妙案を考えついた。それはガイの評価をキムラスカだけでなく、マルクトの評価も共に下げる事だ。

思い付けばこれは言ってしまえば簡単な事だった。何せガイの行動は問題行動のオンパレードなのだ。ちょっと文章にすればそれだけでも貴族というか、ルークを舐めたものであるかを物語るには十分過ぎるのである。これを生真面目で誠実なフリングスが知れば、ルークの思い通りに協力してくれるのは火を見るより明らかで、実際にその通りに動いてくれた。マルクトでもガイを引き取るような事はしない、そう言ってピオニーに上奏する形で。

・・・そしてこれがあえてルークがファブレから放逐するという形で済ませた、本当の理由でもあった。

いくら他者への不敬を不敬と思わず易々と内側に土足で踏み込むガイとて、マルクトから徹底的な拒絶を示されたらひとたまりもあるまい。何せガイはファブレへの復讐が難しくなれば、取れる手段はそう多くはないのだ。その少ない手段の中で最も安全なのはマルクトに戻ることだが、その戻るべき場所と定めたマルクトには自身の悪評がはびこっていて尚且つ自身の態度からそうなっているのだと知れば流石にガイでも自分のやったことのまずさに気付く・・・ルークはそう思っていた、ガイが勝手に潰れていく因果応報の形になってしまうだろうと。



(さぁ、自爆ショーのクライマックスは自らで盛大に飾りな。自爆スイッチを何のスイッチかも分からず押す形でな)
・・・そしてまだガイの終幕はここではないと、ルークは確信している。青ざめながらも滑稽にも決心を決めた表情を浮かべるガイの姿を見たルークは心中で楽し気に告げる、勝手に自爆して死ねと。









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