「まぁまずこれからだ・・・後で読み返しても構わないけど、とりあえずは俺がお前に見せてやるよ。これを」
「え・・・？」
そこからルークが懐から取り出したのは何やら書状のようなものだが、それが何かを理解出来ないガイは不安そうにその書状に視線を向ける。
「・・・ホラ、目を皿にしてよく見てみろ。これがお前に対しての処置だ」
「・・・・・・なっ！？これは・・・！？」
それで書状を広げて眼前に突き付けるルークにガイはその中身に目を通していくと、次第に表情が変わりその中身に驚愕の声を上げた。
「・・・おい、一体なんだってんだその中身は・・・？」
「ん？あぁ簡単に言うとな」



「公爵直々のクビ宣告の書状で、同時にバチカルの出入り禁止にファブレに関する人間への接触を禁じる・・・といった中身だよ。それを破ったならガイを見つけ次第、捕縛して処刑するってオマケつきでな」



「何・・・っ！？」
・・・絶句で言葉の出ないガイに痺れを切らしたアッシュが中身が何なのかと聞くが、ルークが何でもないように告げた書状の中身の要約に同じように驚愕をした。バチカルからの追放及びファブレに二度と関わるなとの達しでオマケに破った場合の制裁のあまりにも過酷な内容に。
「・・・テメェ、なんでそんなことを・・・！？」
「あれ？俺よっかお前の方が分かるんじゃないのか？ガイの口調がどれだけ貴族なめてんのかって。お前まず間違いなく屋敷にいた時ガイがタメ口聞いてたらキレてたろ。それが従者の態度かってな。まぁタメ口だけが原因じゃねぇけど、それも含めて色々っつーんならお前もガイをどうにかしろくらいは言ってたろ。自分の立場で置き換えてみろよ」
「・・・っ・・・」
だがルークに対する敵愾心の勝るアッシュは批難を含ませた声を向けようとするが、すかさず自身に置き換えて考えろと話の方向性を変えられた事で少し考えた素振りを見せたと思ったら、微妙に悔しそうな顔を見せながらも反論してはこなかった。



・・・これはルークがアッシュの未だに残る矛盾した貴族意識に加え、あまりアッシュとガイがタメ口で会話をするような気安い関係でないことを利用したものだ（今はその気安い関係をルークは唾棄すべき物と思い、黒歴史と思っている）。アッシュからすれば自身がファブレにいたならガイの行動は確実に許せない物として見ていただろう、傲慢な貴族としての姿で・・・そしてそう考えるだろうからこそルークはこう言ったのだ、変にアッシュにガイの事でこれ以上突っ込まれても面倒な為。



「納得してくれたみたいだな・・・まぁ何だかんだで俺はガイの主だったし、そんな行動を報告して父上に処分を頼んだらこの書状の通り・・・って訳だよガイ。ただバチカルにはちょっと色々あって帰れなかったから時間はかかったけど、その分の結果が今ここにある。書状って形でな」
「っ・・・！」
アッシュが黙ったところでルークは視線を戻し書状をヒラヒラと目の前でちらつかせながらこれを手に入れるのに苦労もあったと過程の事を仄めかすように言えば、その宣告にガイは信じられないといった様子で目を見開きながらプルプル震え下を向いた。



・・・ここでルークは嘘をついた。それは書状はアクゼリュス行きを命じられる前夜に、公爵から既に手に入れていたという事だ。ただそれを何故今まで使わなかったのかと言えば、最も効果的な場面でガイに突き付けることを目的としていたからだ。

もしアクゼリュスの時に書状を突き付けていたならガイが何をするかの予測がつきにくい上に、後々自分達が考えているガイにとっての最悪な結末に繋げにくい事になるとルークは考えていた。だからこそルークは今ここでファブレ公爵公認の処断を明かしたのだ、機が来たと考えた為に。








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