必然は偶然、偶然は必然 第十七話
「正直な気持ちを言えば悪い気はしない、彼女は十分に魅力的だからね。だが今私は彼女を愛していいのか・・・そう思ってしまうのだ」
「何故疑問に思う?」
「・・・私はかつての生涯において王としてその責務を果たしたつもりだ。ただある一点・・・結婚をしなかった事を除いてね。それは私の生涯においての最大のわがままでもあった。かつて想いを馳せた者に対する操を勝手に立てるという形でね」
そして観念したからこそ自らの事を話始めるウッドロウだが、真剣に語るその口調にクラトスも真剣に返す。
「・・・随分と勝手な事をしていたな、お前も」
「あぁ、今でもそう思うよ・・・そしてその操を立てた、という事に今も私は引きずられていると自覚している。そんな私がリグレットの想いに答えていいのか、そう考えてしまうのだ・・・」
「過去に引きずられる、か・・・難儀な事だな、お前も」
「・・・お前も?」
わがままという言葉にクラトスは少し呆れたように言葉を向けるが、遠くを見るような瞳で真剣に悩む表情を見せるウッドロウの姿にクラトスもつられて寂しげな表情を浮かべる。だがお前もという言葉にウッドロウは首を傾げる。
「・・・私にはかつて妻がいた。長い生の中で初めて持った妻だった」
「だった・・・もしやその貴方の妻という人は・・・」
「あぁ、死んだ。私はアンナを守りきれなかった・・・」
そして重々しく自身の過去を語りだすクラトスにウッドロウもすぐにその中身を察し、クラトスは重く目をつぶる。
「・・・アンナ。彼女は長く灰色の生を享受していた中でほぼ初めてに等しく明るい時間を私に与えてくれた。だが同時にアンナが死に絶望にも暮れた・・・だがそれでも彼女との時間は私の心の拠り所になった。それが何故か分かるか?」
「・・・貴方が本当にアンナさんを愛していたからですね」
「そうだ・・・人の前でこのような事を言うつもりはなかったが、お前が迷っているようだからな・・・だから言おう、中途半端にするくらいならリグレットの事は断れ」
『(な・・・っ!?)』
アンナとの時間がいかに大切だったか、それがわかるからこそ愛していたという結論にすぐに至るウッドロウにクラトスは答えを肯定しつつも目を開けてまっすぐに中途半端な事をするくらいなら断れときっぱり告げる。だがそのクラトスの言葉を端で聞いていたイクティノスは内心で絶句していた、思惑から外れるような事を勧める仲間に。
「言ってみればお前がそのように迷うのは過去を引きずっているからだ。その相手に対してな。だがその思いに振り回されるままではリグレットが哀れに思えてならん。それにルーク達から聞いたが前にチェルシーだったか、お前を慕う子供を子供と断じた事からずっと結婚をしなかったのだろう・・・確かにそこまでされるとはお前も思っていなかったのだろう。だがチェルシーの時と違いリグレットは既に大人だからこそ、はっきり断ってやる方が優しさでありけじめにもなる。お前がリグレットの気持ちに答える気がないというならちゃんと断れ・・・だがもしお前がリグレットの気持ちに答える気があるというのであれば、全てを受け止め愛せ。自分の中にある全てに相手の全て、それを受け止めた上でだ」
「自分の中の全てに、相手の全て・・・」
「私の言葉をどう受け止めるかはお前次第・・・だがお前はリグレットの気持ちに答える義務があり、それはお前にしか出来ない事だ。それは分かるな?」
「・・・あぁ、分かるよ。そして貴方の言葉を聞いたからこそ、私も考えなければならないと気付かされたよ。真剣にリグレットとのことをね・・・」
『(・・・これでよかった、のか?)』
だがクラトスにしては饒舌に話を続けた上にその中身があまりにも真剣に二人の事を考えた物だったことが、ウッドロウのリグレットに対しての真剣さに満ちた顔を引き出せた事にイクティノスはこれでよかったのかと疑問符を浮かべていた。リグレットとくっつける思惑が成功するのかどうか、わからない状況に陥った為に。
.
「何故疑問に思う?」
「・・・私はかつての生涯において王としてその責務を果たしたつもりだ。ただある一点・・・結婚をしなかった事を除いてね。それは私の生涯においての最大のわがままでもあった。かつて想いを馳せた者に対する操を勝手に立てるという形でね」
そして観念したからこそ自らの事を話始めるウッドロウだが、真剣に語るその口調にクラトスも真剣に返す。
「・・・随分と勝手な事をしていたな、お前も」
「あぁ、今でもそう思うよ・・・そしてその操を立てた、という事に今も私は引きずられていると自覚している。そんな私がリグレットの想いに答えていいのか、そう考えてしまうのだ・・・」
「過去に引きずられる、か・・・難儀な事だな、お前も」
「・・・お前も?」
わがままという言葉にクラトスは少し呆れたように言葉を向けるが、遠くを見るような瞳で真剣に悩む表情を見せるウッドロウの姿にクラトスもつられて寂しげな表情を浮かべる。だがお前もという言葉にウッドロウは首を傾げる。
「・・・私にはかつて妻がいた。長い生の中で初めて持った妻だった」
「だった・・・もしやその貴方の妻という人は・・・」
「あぁ、死んだ。私はアンナを守りきれなかった・・・」
そして重々しく自身の過去を語りだすクラトスにウッドロウもすぐにその中身を察し、クラトスは重く目をつぶる。
「・・・アンナ。彼女は長く灰色の生を享受していた中でほぼ初めてに等しく明るい時間を私に与えてくれた。だが同時にアンナが死に絶望にも暮れた・・・だがそれでも彼女との時間は私の心の拠り所になった。それが何故か分かるか?」
「・・・貴方が本当にアンナさんを愛していたからですね」
「そうだ・・・人の前でこのような事を言うつもりはなかったが、お前が迷っているようだからな・・・だから言おう、中途半端にするくらいならリグレットの事は断れ」
『(な・・・っ!?)』
アンナとの時間がいかに大切だったか、それがわかるからこそ愛していたという結論にすぐに至るウッドロウにクラトスは答えを肯定しつつも目を開けてまっすぐに中途半端な事をするくらいなら断れときっぱり告げる。だがそのクラトスの言葉を端で聞いていたイクティノスは内心で絶句していた、思惑から外れるような事を勧める仲間に。
「言ってみればお前がそのように迷うのは過去を引きずっているからだ。その相手に対してな。だがその思いに振り回されるままではリグレットが哀れに思えてならん。それにルーク達から聞いたが前にチェルシーだったか、お前を慕う子供を子供と断じた事からずっと結婚をしなかったのだろう・・・確かにそこまでされるとはお前も思っていなかったのだろう。だがチェルシーの時と違いリグレットは既に大人だからこそ、はっきり断ってやる方が優しさでありけじめにもなる。お前がリグレットの気持ちに答える気がないというならちゃんと断れ・・・だがもしお前がリグレットの気持ちに答える気があるというのであれば、全てを受け止め愛せ。自分の中にある全てに相手の全て、それを受け止めた上でだ」
「自分の中の全てに、相手の全て・・・」
「私の言葉をどう受け止めるかはお前次第・・・だがお前はリグレットの気持ちに答える義務があり、それはお前にしか出来ない事だ。それは分かるな?」
「・・・あぁ、分かるよ。そして貴方の言葉を聞いたからこそ、私も考えなければならないと気付かされたよ。真剣にリグレットとのことをね・・・」
『(・・・これでよかった、のか?)』
だがクラトスにしては饒舌に話を続けた上にその中身があまりにも真剣に二人の事を考えた物だったことが、ウッドロウのリグレットに対しての真剣さに満ちた顔を引き出せた事にイクティノスはこれでよかったのかと疑問符を浮かべていた。リグレットとくっつける思惑が成功するのかどうか、わからない状況に陥った為に。
.