必然は偶然、偶然は必然 第十七話

・・・そして程無くして、イオン達の前にディストが引き立てられて来た。



「・・・さてディスト、お久しぶりですね」
「ど、導師・・・」
・・・先程のモース同様ウッドロウ達に周りを囲まれた状態で、イオンと対峙する事になったディスト。導師としての余裕に満ちた笑みを向けられ、譜業椅子から下ろされたディストは恐怖に満ちた表情を浮かべ震えている。
「あぁそんなに緊張しなくてもいいですよ、貴方に用があってここに来てもらっただけですから」
「よ、用・・・?」
「えぇ、貴方にはこれからの旅に僕達と共に来ていただきます。拒否は許しませんよ」
「・・・旅・・・一体何を・・・?」
そんな姿に笑みを崩さず柔らかい口調で付いてきてもらうと言うが、ディストは少し落ち着いたものの何をと理解出来ていない様子を見せる。
「貴方には色々してもらいたいことがあるんですよ。例えば大爆発の研究についてね」
「大爆発!?何故貴方がそのようなことを・・・!?」
そこで大爆発の研究をしてほしいと真剣に切り出すイオンだが、フォミクリー技術に余程明るくなければ知りようがない単語にディストは驚愕を隠しきれずに何故と声を大きくする。
「色々あるんですよ・・・ですが貴方にやっていただくことはそれだけではありません。もし断ると言うのであれば、貴方にはモースと共に査問にかけた上での処断という結末をプレゼントしましょう」
「モースを処断!?そんなこと、貴方が出来るはずが・・・!」
「したんですよ、つい先程ね。証拠が見たいというのであれば後で案内して差し上げますが」
「・・・っ!」
何故知っているのかということをぼかしながらもイオンは断った場合の結末を告げると、モースの名が出てきた事で出来ないだろうとディストは叫ぶ。だが既にやったことなので証拠なら見せると付け加え余裕の笑みを浮かべたイオンに、ディストは信じられないと言った表情で目を見開いていた。
「それにそもそも貴方も聞いているのではないのですか?僕がアクゼリュスでヴァンと敵対したことを。それなのに今こうやって貴方が捕まってる現状で、僕が貴方を逃がすと思っているんですか?」
「・・・っ!」
更にそこで追い討ちをかけるようヴァンの敵と自身で示すイオンに、今度はハッとその事を思い出したようディストは近くにいたリグレットを見る。
「・・・そう言えば貴女にアリエッタが導師の元に行ったきり戻ってこないと思っていたら、アリエッタならいざ知らず貴女までもがまさか寝返っていたのですか・・・!?」
「・・・否定はしない。だがお前にそうやって寝返りを批難されるようないわれはないな、ヴァンとモースの間をコウモリのように渡り歩いているような奴にはな」
「そ、それは・・・」
それでまさかと言ったニュアンスを盛大に匂わせるディストだったが、リグレットは冷静でいて冷やかにお前も似たような事をしているだろうと返され途端に勢いを無くす。
「だが今はそのようなこと関係ない。お前に残された選択肢は導師に従うか否か、その二つだけだ。ただ補足の為に言っておくがこれよりヴァン率いる神託の盾がモースも含め、助けに来るなどと楽観視してもまず来ないと思っておけ。今はもう神託の盾から除名されてダアトに戻ってこようものなら捕らえよとの達しが出ている所だからな」
「なっ!?そこまで貴殿方はヴァン達に対しての対処をしているのですか・・・!?」
「そうだ」
それでリグレットは持ち前の軍人気質を全面に押し出し変な希望を持たないようにヴァン達の助けはまずないと告げると、更にディストは驚きに揺れただリグレットを見ることしか出来なかった。







14/21ページ
スキ