必然は偶然、偶然は必然 第十七話

「・・・まぁこの際貴方がわかっているかどうか、それはここに置いておきましょう。ですが貴方を助けるような方は来ませんよ」
「・・・え?」
「貴方の配下であるヴァン麾下の神託の盾は既にローレライ教団から丸々と登録を抹消しています。貴方の協力者であることは既にわかっていますからね。その上でユリアシティに関連していると見られる教団員には貴方に接触することは許さないようにしています。なので裁きが下るその日まで貴方は誰にも助けられることのないまま過ごしていただきますよ、軟禁という形でね」
「!!」
・・・その絶望を与える方法とは味方を根こそぎ奪った上で、自身に与えられた軟禁という物を意趣返しに使うというもの。始めは何を言っているのか理解出来なかったモースだったが、ヴァンもユリアシティの者も誰も来ないと言われ表情が一気に蒼白へと変わった。
「ですのでモース、貴方には今から適当な部屋へと移っていただき時が来るまで待っていただきますよ・・・貴方が裁かれるその時をね」
「そ、それは・・・貴方は、どうあってもこの私を排除しようというのか・・・!?」
「むしろそうと理解しなければおかしいでしょう・・・今まで散々貴方は勝手に行動してきたんですからね。この辺りで潔く罪を受け入れ、素直に裁かれてください。預言の為とうそぶき行動していたことがいかに独り善がりであったかを理解する為にね」
「・・・っ・・・!」
それで尚笑顔を浮かべプレッシャーを滲ませるイオンにモースは信じたくないといった声をやっと上げるが、冷たく導師として許すわけがないと告げるその声にショックを受けたようにハッとしてうなだれる。そしてそのままワナワナと震えだした。
(ここまで追い込めば、この樽豚が取るだろう行動など1つしかありません。さしずめ最後の切り札を明かせばこちらに流れが来るとでも考えているのでしょうが、そんなことにはなりませんよ)
その様子を冷静に見ていたイオンはモースの取るだろう行動を予測し、密かに口元を笑んで上げる。
「・・・この、レプリカ風情が!何故私が貴様の言うことなど聞かねばならぬのだ!」
「「「「!?」」」」
「・・・だ、大詠師・・・!?」
そんなイオンに気付かずカッと怒りに染めた顔を上げモースはイオンをレプリカ呼ばわりして罵倒するが、そのあまりの変貌振りに詠師陣は驚き戸惑いトリトハイムが代表するようにその真意を問う。
「ほう・・・今それを言いますか、貴方は?」
「!ヒッ・・・!?」
だが一人その展開を予期していたイオンは今までの中でも最大になる冷笑に加え威厳と殺気に満ちた声と瞳を向け、一瞬でモースの怒りは恐怖に震え怯えへと変わった。
「す、すみません導師・・・一体我々には何事なのか、わからないのですが・・・」
「あぁ、そうでしたね。すみません、今からお話しします。ですが今から話すことはダアトにとってまさに禁忌の事であり、このモースがいかに貴殿方を裏切ってきたかの最大の事柄でもあります。ここで聞いたことはけして他では明かしてはなりません・・・いいですね?」
「は・・・はい・・・」
そこにトリトハイムが少々ビクビクしながらどういうことかと入ってきた為、説明はするがと言った上で前置きを有無を言わさない圧力を込めた笑顔で告げたイオンにトリトハイムは戸惑いながらも首を縦に振る。












・・・そして語られるイオンからの被験者のイオンの死の事実に、ヴァンにディストを巻き込んだ上でレプリカとして自分が産み出されたという事実。尚この際のモースの発言はいっそ華麗なまでにイオンの視線一つで黙らされた。



「・・・という訳で、既に被験者は死んでいます。それでモースにヴァン達が仕立てたのはレプリカの僕という存在になるんですよ」
「「「「・・・」」」」
それで全てをイオンが話終えると詠師陣はなんとも言えない微妙な表情を浮かべていた。それもそうだろう、あまりにも唐突であり信じられない事実を突き付けられたのだから。











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