必然は偶然、偶然は必然 第十七話

「・・・モース、貴方の行動は預言に大義名分を借りただけの私利私欲に満ちた行為です。貴方の行動は預言の為と言いつつその預言すら蔑ろにしている、それは矛盾としか言えない物と言えます。ましてや自分の都合だけで人の生死を決めて殺すなど、何様のつもりですか。貴方は・・・」
「・・・っ・・・!」
・・・目に見える怒りを抑え、静かに道徳を問うように投げ掛ける。



イオンの責めるような視線と声にモースは何も言えずに、視線を反らして押し黙り以外に出来ない・・・まぁこれは下手にモースがキムラスカとマルクトの戦争の預言が詠まれていると詠師陣が知ってないと思っているのが大きい。戦争の預言はイオンはおろか詠師陣にすら内密にされていたものなのだ、今ここでナタリアの事実を利用したのは戦争の為だなどと声高に言えば事態がこじれるどころか流れがイオンに一気に傾きかねない・・・そうモースも少なからず感じているからこそ黙らざるを得ないのだが、それが既にイオンにより知らず知らず背負わされたハンデであるとは知るよしもない。



「モース、貴方の犯した行動は到底許されるような物ではありません。貴方の犯した行動は全て白日の元に晒させていただきますよ、ナタリア殿下の件もね」
「なっ!?なんですと!?その事をバラすと言うのですか、導師!?」
その上でまずナタリアと共に共倒れしてもらわんと入れ換えの件‘も’明かすと言ったイオンに、モースは信じられないと声を荒げる。
「今更この場で嘘など言いませんよ、モース。それで貴方から殿下の事実を聞いたのか事実確認を陛下にしたところいたく心を痛まれた様子でした。そしてその上で貴方が起こした事を裁くために殿下の事も明かすと言ったら、その事に賛同の言葉をいただけましたよ」
「!?そんな・・・そんなことを明かされればキムラスカは混乱に陥る!そんなこと陛下が許されるはずがない!」
「心配はいりませんよ。その時には陛下には殿下の事は貴方が独断で起こした事で、つい最近アニスのスパイの件から芋づる式に発覚したという事にして処理をします。それでその時には陛下の口から出てくるのは知らなかった、の一言です。つまりは・・・そういう事ですよ」
「!!!?」
そんな声に既にインゴベルトの許可は取れてると言えばモースはすかさず信じられないと叫ぶが、イオンはここで昔であったら絶対に使わなかったであろう意味深な間を空けてのあえての結論を言わない話口に驚愕のあまり絶句して口を大きく開けた・・・責任は全てモース一人になすりつける、明らかにそうとしか取れなかった間の為に。
「・・・当時辛い事実を黙ることを強いられた貴女に、再びこのような秘密を強いりたくはありません。ですが今の事実をキムラスカが知っていたことを正直に明かせば、モースが言ったようにキムラスカが混乱に陥る事になります。ですので今言った事・・・ここから出た後何があってもこの事は言わず、黙っていただいてよろしいですか?」
「・・・それは、勿論です。私も不用な混乱など望みませんし、そもそもこのような事態になったのも預言を実行することをためらわなかった者達のせいなのです。外に出ても私はこの事は言いません」
そんな驚きから回復出来ないモースを尻目に唯一一般人の部類の証言者である乳母に丁寧に口止めをイオンが視線をやりながら要求すれば、すぐに乳母は固い意志を浮かべながら首を縦に振る。








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