必然は偶然、偶然は必然 第十七話

・・・乳母の説得も無事に終えたことで、万全の状態でモースの糾弾に望めることになったイオン達。その中で数日経ち、イオン達は改めてダアトへと辿り着いた。



‘‘‘‘・・・っ!?’’’’
・・・そして港から上陸してダアトの中へと入っていったイオン達だが、その光景を見てダアトの住民は驚き戸惑い声を失って身を引いていた。何故ならイオン達の中で、モースがセネルに縄で縛られ引き立てられて来ているのだから。
「・・・」
そして引き立てられている当の本人のモースは本来ならわめきたてて助けを周りに求めていただろうが、うつむいて冷や汗をかき無言を貫いていた。
(事前に黙らせておいてよかったですね、声が出ていたら今頃大騒ぎになっていた絵が見えますし)
そんな光景にイオンは手を打っておいてよかったと、内心でほくそ笑む。



・・・ここでモースが声を出せない理由はズバリ言ってしまえば、脅しだ。

変に騒がれても時間がかかり余計な手間が出てくるのはイオン達には容易に想像出来た。ならばとイオンはタルタロスを出る前にモースにこう言ったのだ、「もし騒ぎを起こしたり査問を避けると見なされるような行動を起こすようなら、言い訳など言わせる暇もなく即座に首を落とすことになる」と。

そんなモースの知るイオンらしくない一面をイオン自身から本気と分かるよう見せつけられたことで、モースはかつてないほどに萎縮し恐怖に震えた。そしてその状態でタルタロスから連れ出した訳だが、効果はてきめんでモースは何も出来ずにただ連れてこられている訳である。



・・・そんな確かな脅しをかけられモースが黙り民衆達の困惑の視線を受けている中、イオン達は教会の中へと入る。
「お待ちしていました、導師」
「ご苦労様です、トリトハイム」
そこにいたのはトリトハイムを含めた詠師陣全員で、その丁寧なお出迎えにイオンもその労を労う。
「早速ですが今からすぐにモースの査問を開始することは出来ますか?」
「無論です。導師が戻ってきたならすぐに始められるよう、準備を整えていましたので」
「!」
「そうですか。では早速始めたいので、行きましょう」
「まっ!・・・待って、ください・・・」
それからさっさと査問についての話題を切り出すと淀みなく流れるように話が進んでいき、止まる様子を見せないことからモースは焦ってたまらず騒ぎにならない程度に気を使い制止の声をかける。
「なんでしょうか、モース?」
「い、いえ・・・私が言いたいのは導師にではなく、トリトハイム達にです・・・」
「我々に?」
そこでイオンが振り返り首を傾げるが、少し怯え気味な様子で話はトリトハイム達とモースは言い当人達は首を傾げる。
「お前達、私を査問にかけるということの意味をわかっているというのか・・・?」
「えぇ、わかっています。預言の名の元、好き勝手に横暴を働く奸物を粛清するという意味をね」
「なっ・・・!?」
そこで助けをすがるような目で詠師陣を見つめるモースだが、トリトハイムから容赦なく奸物扱いで返され絶句した。
「いかなる理由、いや預言を盾にするなど余計にタチが悪い。貴方の起こしてきた数々の所業・・・とても許されることではない・・・覚悟していただきたい、預言という大義を盾に貴方が犯してきた行動がいかに罪深いかを」
「・・・っ!」
・・・はっきりとした、明確な否定の意思表示だった。トリトハイムの強い意志のこもったいっそ怒りがこもっているかのような答えに、モースはたたらを踏み下を向いた。絶望を抱いた表情を浮かべ。






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