必然は偶然、偶然は必然 第十七話

・・・ここでルーク達から時間軸は少し戻ったケセドニア。ここにイオン達は立ち寄っていた。



「・・・ではアスター、こちらの方はしばらくダアトに連れていかせてもらいますよ」
「イヒヒ、どうぞ。他ならぬイオン様のお頼みですから」
・・・アスターの屋敷にて屋敷の主であるアスターと対峙しているイオン。その隣にいるかつてラルゴの妻であるシルヴィアからナタリア、正確にはメリルを奪った乳母の姿がある。その乳母は訳が分からないと言った様子である、隣ですんなりと進められている自身のダアト行きについて。
「では行きましょうか」
「は、はぁ・・・」
そして自身に向けられたイオンからの笑顔での言葉に結局乳母は事情を理解出来ぬまま曖昧に頷き、その後を付いていく・・・









・・・そしてその乳母を連れてタルタロスに戻ったイオン達は、ダアトに向けて出航する中船室で乳母と向き合っていた。
「まさか・・・ナタリア様の事実を話されるなんて・・・そんな・・・」
「言っておきます、これは決定事項です。そしてその中で貴女の証言が重要になるんです、協力をしたという証言が」
そこでナタリアの事を世界に明かすと告げられた乳母は愕然とした様子になるが、イオンは毅然とした態度で揺るぎなく協力をして欲しいと願い出る。
「・・・何故、今になって・・・」
「今明るみに出たからです。モースはその事実を持って、インゴベルト陛下に脅しをかけました。詳しい中身は言えませんがナタリア殿下の秘密を持って、今になってその秘密を明かす形でです」
「えっ!?まさか、そんな・・・!?」
だがまだ信じきれない乳母ははっきりした返事を返せず何故というだけであったが、中身こそぼかした物のはっきりとナタリアの事をモースがインゴベルトに明かしたとイオンから聞かされ驚き動揺に目を瞬かせる。
「・・・預言を守る為に貴女も苦しい思いをしてナタリア殿下の秘密を守ってきた、というのは分かります。ですがモースがその預言をもって人柄を持って言う訳ではありませんがインゴベルト陛下という方を脅した、という事実は預言を扱う以前に人としてとても許される行為ではありません・・・故にモースを糾弾するために、ナタリア殿下の事実を明かす必要があるのです・・・協力していただけますね?」
「・・・そんな・・・預言と言われ、私も今までその事実を明かさずにいたのに・・・シルヴィアが死んでもその事は言わなかった、預言の為って言っても許される事じゃないって分かってたのに・・・なのにそれをそんなことのために、明かされるなんて・・・」
その様子に哀れむ視線を向けながら優しく諭すよう説得の言葉を放つイオンの言葉に、乳母は呆然としながらも過去の後悔も含めモースに対する失望を呟く。
「・・・わかりました、イオン様。ナタリア殿下の事実の証言、引き受けさせていただきます」
「・・・そうですか、ありがとうございます」
そして最終的に出てきたのはどこか強い決意がこもった、了承の声。その乳母の答えにイオンは優しく微笑んで、頭を下げた。










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