必然は偶然、偶然は必然 第十六話

「さ、とりあえずセフィロトまで行くぞ。なんだかんだ言っても寒いしな、早く済ませようぜ」
「はい、です」
その笑顔のままに先を急ごうと言うルークにアリエッタも気持ちを切り替え真剣に返し、一同は先へと進む・・・












・・・そしてセフィロトの入口を見つけたルーク達はもう慣れた様子で中に入り、パッセージリングの前へと容易に辿り着いた。
「・・・よし、これでここも終わりと。さぁ、さっさとケセドニアに行って休んどこうぜ。しばらく寒いのは勘弁だ」
『ルーク、聞こえるか』
「ってあれっ、イクティノス。どうしたんだ?」
「イクティノスだと?」
それで制御板も操作し終わり早々に退去しようと声を上げたルークの頭に、イクティノスの声が唐突に響く。いきなりの前ふりのない通信に軽く驚くルークに、何をといぶかしむディムロス。
『少し報告がある。ダアトでディストが捕らえられた』
「えっ、ディスト捕らえられたのか?」
『あぁ。捕まえた兵士の話では一人でダアトに戻ってきた所を人数を集め、隙を見て捕らえたそうだ。そしてそれに伴ってかねて言っていたよう、ヴァン達の神託の盾の地位剥奪を表に晒した。これで情報が渡れば迂闊にヴァン達もダアトに戻ることは出来んと知ることになるだろう』
「そっか、ディストを捕まえたか・・・案外早かったな」
『向こうはほとんど何も情報が無いも同然の状態だからな。そんなものだからダアトに戻って情報を得ると言ってディストは戻ってきたそうだ。まぁこれ幸いに研究の為に適当な言い訳をつけ戻った、というのがイオンの見方だがな』
「だろうな。それで捕まってちゃ世話ねぇけど、結果オーライだしよしとするか」
そこで話題に上がったのがディストの捕縛。その時の事細かな説明をするイクティノスに、ルークは軽く驚いた後笑みを浮かべる。
『まぁそういうわけだ。そちらは今どうしてる?』
「こっちは今からケセドニアに向かう所だ。多分こっちが早く着くと思うから待ってるぜ、マルクト側の宿でな」
『あぁ、わかった。ではな』
そんな状況説明を終えた所でそっちはどうかと聞かれ正直に答えつつ待ってるとルークが返せば、イクティノスは了承を返しまたと通信を切る。
「・・・ディスト、捕まった、ですか?」
「まぁな。つってもアイツ自身には戦闘力ないし、考え方も謡将達と違うからな。捕らえときゃまぁ無害だよ。変に行動することもねーだろうし」
「そう、ですか」
そこにアリエッタが覗き込むようディストの事の確認を取ってきて、ルークはアリエッタを安心させるためではないが本心からの言葉で返し納得をする。



・・・事実、ルークにイオンからすればディストはレプリカ技術を用いたネビリム先生復活を諦めた後は無害な人間となっていた。妄執に取り憑かれていたことから解放された反動に加え、表に出ないとは言えピオニーからその頭脳を買われた上での仕事をすることになって忙しさに追われあまり何も出来ない状態になったことが大きい。

とは言っても世界が混乱に巻き込まれてからはもっぱらピオニーの愚痴を聞く係になったり、ジェイドにガイの行動に嘆息したりと精神面でのケアに回ったりディスト自身に精神負担が来たりもした。その上ピオニーが倒れてからは専門医の真似事をして肉体のケアもしていた。

・・・その思想に思考は確かにぶっ飛んだ面も多かったが、その思考というかネビリム関連のこだわりがなければディストは比較的まともな人間であった。そして無害でもあったからこそピオニーはディストを最終的に処分はせず、生かして手元に置いていた訳である。その姿をルーク達は見てきてディストへのイメージを変えたのだった。



「あ、話が逸れたな。んじゃ改めて行くか、ケセドニアに」
「そうね、行きましょ」
そんなディストへの評価はさておきともう一度出立と言うルークにハロルドも同意する、多数の命運が左右されるケセドニアへと・・・















一つ一つの歩みは重くも早い



だが想いを背負い踏み締める重さはあれど歩みは止められない



全ての成功への道の為焔達は最高の結果へ向け最短を歩む






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