必然は偶然、偶然は必然 第十六話

「さぁ行くぞ、ロニール雪山にって言いたいけど・・・大丈夫か、寒いの?寒いならケテルブルクで防寒具買ってくけど・・・」
「あぁ、心配いらない。私とハロルドは大分寒い時代を長く生きてきたのでな、これくらいなら大丈夫だよ」
「アリエッタも大丈夫、です」
「そっか・・・なら行くか」
それでアルビオールから出て寒いならケテルブルクに寄るかと気遣うルークにディムロスもアリエッタも大丈夫と返し、その返事でルークは先頭を歩き一路ロニール雪山に向かう・・・









・・・それから程なくしてロニール雪山に着いたルーク達。何度か来ていて既に見知って慣れた道を歩くルーク達だが、雪山のある部分に来たところでアリエッタが立ち止まる。
「・・・もしかしてここ、ルークが言ってたアリエッタがルーク達と戦ったって場所、ですか?」
「・・・あぁ、確かそうだな」
そこは適度に開けた場であり、同時にアリエッタの言った通り過去にルーク達が戦った場所。その言葉にルークは少し感慨深げに辺りを見渡し肯定を返す。
「・・・不思議な気分、です。ここでルーク達と戦ってたなんて、とても思えない、です・・・」
「そりゃま、今のアリエッタは謡将の仲間じゃないからな。多分タイミングが悪かったり俺らの行動を把握されてたりしたらラルゴにシンク辺りと鉢合わせ、なんて展開も考えられたけどアニスがいない今となっちゃそんな可能性はまずないだろうな」
「・・・アニス、ですか・・・」
「何か思うところがあんのか、アイツに?やめとけ、イチイチ考えても無駄だぞ。アイツのことなんか考えんの」
アリエッタはその場を見ながら複雑な内心を告げるが、ルークはそれは当然と言いつつも今のアリエッタ抜きでシチュエーションで敵に会う可能性はないだろうと告げる。だがその原因と言える人物であるアニスの名にアリエッタは抑えながらも少し出ている怒りに震えるが、ルークはそれは意味がないと軽く首を振りながら告げる。
「アニスはあの両親のせいでモースに狙われ、歪まされた人生を歩まされたってのは否定出来ない。けどだ、イオンを殺すきっかけを作って心に整理をつけるためにアリエッタとの決闘を一方的に叩きつけた。それもアリエッタの為だと言いつつも、実質自分の心に納得の出来る体のいい言い訳を作る為にだ・・・そしてその結果、アイツは自分の起こした行動の責任を取ることもなくあくまで責任を取ったと言った体を取った。神託の盾として、導師守護役としてイオンを見殺し裏切ってしまった責任を同じ悲しみを背負う立場にあったアリエッタを殺した悲しみを背負った事で帳消しになったってな」
「っ!それはっ!そんなこと、許されるはずがありません!」
「そう、実際そこまでしてしまったならちゃんとした法に基づく刑罰を受けるべきなんだ。軍人ならな・・・まぁそこは昔の俺が何も知らなかった責任もあるし、イオンの死も色々ゴタゴタの状況でちゃんとその時の事を知っていた人が少なかったのもある。そして何より・・・ティア達がそれを認めてしまったってのが大きい。アニスは辛いながらも自分の責を果たした、だなんて感じて同情までしてたからな。そしてそのまま謡将達を倒して俺が消えてアッシュが地上に戻った後、ティア達共々世界を混迷に叩き落とす訳なんだけど・・・結局アイツはダアトを背負う立場になっても、自分の失敗とその先に発生する責任を認める事はなかった。それこそダアトが破綻をきたしてもだ・・・だけど今アニスは自分の責任に対して向き合わなければいけない状況にいる、いや俺達がいさせるようにした。分かるか、アリエッタ?アニスは自分の責任を取る時が来たんだ、いくら嫌がってもな。そしてアニスの処遇を決めるのは俺やイオンにもちろんアリエッタ個人がやることじゃなく、ダアトという組織が行うべき事なんだ」
「・・・はい、わかります。神託の盾として罰せられる、だからもうアリエッタが怒るべきじゃない・・・そういうこと、なんですね?」
「そうだ。ま、詠師一同揃って問題ありと見たんだ。もうこれ以上何か言う必要もないと思うしな」
・・・いかにアニスが無責任であるか、そして今その本人は否応なしに責任を負わざるを得ない立場にある。



アニスは軍人として裁かれるべきと言ったルークに、激情に任せた声を上げたアリエッタだったが最後には話の中身に納得したよう伺うように視線を向ける。その視線にルークは頷きつつも罰はもう確定しているだろうと告げ軽く笑みを浮かべた。







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