必然は偶然、偶然は必然 第三話

(あのタルタロスにイオン乗ってんのかな・・・)
エンゲーブに向かう辻馬車の中、ルークは煩わしい言葉を避ける為に寝たフリをしながらタルタロスの音を聞きイオンがいるのかななどと思っていた。



・・・タタル渓谷にて二度目のティアとの再会を果たしたルークだったが、別にティアに頼るような事などペンダント以外に何もなかったルークは必要最低限以外の会話を交わす事もなく、サクサクとタタル渓谷の麓に着いて間違ってるとは知りつつもグランコクマ行きの辻馬車に乗った。

当然ティアはルークの態度に一々突っかかりはしたが、ルークはそれらを流している。



(つーかどういう見方になるんだろうな、マルクト軍が詰めが甘いのか漆黒の翼が巧いのか・・・まぁ普通の考えだと犯罪者を見つけといておめおめ逃げられる軍なんて怠慢だなんて見られるんだろうけど、あくまでジェイドからすりゃたまたま見つけたから行きがけの駄賃程度に漆黒の翼を捕まえようとした程度だろうな~。それでローテルロー橋を落とされちゃ駄賃どころの問題じゃないけどな)
そんな中でルークは爆音の原因を思い出しながら、ジェイドが直接的ではなくともローテルロー橋を落してしまった要因が大きいとも考えていた。



・・・獲物を追い詰める際に気をつけなければならないことがある。それは中途半端に逃げ場を与える事だ。

犯罪者を見つけたならそれに対処する、法を扱う組織に身を置いている者からすればそれはまぁ当然と言えば当然だが、それは時と場合による。十分対策に対応を取れる状況で獲物を追い詰めるなら勝算もあり捕縛の可能性も高いが、ジェイドが漆黒の翼を見つけたのはあくまで偶然の偶発的な物らしかったらしい。そんな状況で考えもなしに砲撃をお見舞いし追い回されれば、漆黒の翼が逃げるためになりふり構わなくなるのも当然と言えた。

その結果マルクトとキムラスカの地を地続きにするローテルロー橋をしばらくの間、使えないようにしてしまった。これは橋の修繕費用の直接的な損害もさることながら、橋を使うことにより商人などの国に益をもたらすような人物の交通が滞り間接的にマルクトの実益を逃してしまった。

・・・それらを考えればもっと確実に、それでいて被害を抑えられるような手段を取るべきだった。その事は結局うやむやになってしまったが、ジェイドはその事で罰されてもおかしくはなかったのではないか?・・・ルークはそう思ってやまなかった。









・・・そしてティアに起こされカイツールに行かなきゃ帰れない事を告げられたルークはそのまま辻馬車に乗って、エンゲーブに着いた。
(さーて、まずはどっちを探そうかな~。イオンかな~、ウッドロウ達かな~?)
入口付近で辺りをキョロキョロしながらルークはまずどちらから合流を果たそうかと考える。
(・・・ま、どっちもエンゲーブにいるんだろうし・・・まずはイオンと合流してからにするか。先に事情を説明しといた方が後々すんなりと行くだろうしな)
そしてルークはまずはイオンからだと思い、ティアに視線を向ける。
「後で宿に行くからしばらく自由行動にしようぜ、ちょっとここ見たいから俺一人で見て回る」
「ちょっと、ルーク・・・!」
久しぶりの再会にいらぬ供をつけたくはない、そんな気持ちをふんだんにぶつけるルークはさっさと呼び止めようとするティアを巻いて村の中に入っていく・・・





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