必然は偶然、偶然は必然 第十六話

「・・・ふぅ」
「どうしたの、ルーク?」
「いや、イクティノスから連絡が入った。どうやらバチカルでモースを捕縛したらしくて、いつ合流するかって話になった。それで遠くない内にケセドニアで合流することになった」
「ふーん、そうなんだ」
・・・イオン達から場所は移りシェリダンに向かう船の一室。その一室にいるルークが何か声を出した事にハロルドが突っ込むが、会話の内容を要約して受け興味を無くしたように声を上げる。
「・・・モースが捕まった、ですか・・・」
「どうした、アリエッタ?」
対照的に何か考え込むよう下を向くアリエッタにルークが訳を聞く。
「・・・ルーク達の話だとイオン様をレプリカで代用するって決めたの、謡将とモースって言った、ですよね?」
「まぁ・・・そうだな」
「・・・謡将が今のイオン様を産み出す、って決めたのは理由があるのは聞いてわかった、です。けどモースがそうする理由って・・・」
「・・・あんまり聞きたくないだろうし、俺の推測でしかないけど言うぞ」
その問いにアリエッタは声を上げるがそのモースの真意を聞きたいという中に聞きたくないと言った相反する響きがこもっていたことに、ルークは覚悟しているのだと重く頷きながらも注意を促し話を始める。
「モースの場合は分かりやすく言うなら被験者の死の後始末をするのが面倒だった、が大半の理由を占めるだろうな。あれが預言以外の厄介事なんかやりたいと思う訳ないし」
「・・・やっぱり・・・」
「これくらいは想像してたか?・・・でもま、それだけじゃないとは思うけどな」
「え?」
「それでも一応モースも大詠師って立場だからな。預言ってなってて他に何も誤魔化す手段がなかったら、なんだかんだで葬式を上げるくらいは仕方無いってやったろうな。けどそんな時にフォミクリーって技術があるのを謡将から知らされてそれが尚且つ、預言に詠まれない技術だって言われたからそれに乗ったっていうか乗せられたみたいな形でイオンを産み出す事を選択したんだと思うぞ」
「・・・それって、謡将のせいって事、ですか?」
「少なくとも謡将からしたらダアト式譜術を使えるレプリカのイオンが必要だからな。けど内密でそうしたなら下手に隠してそのイオンがバレた場合が面倒になるだろうし、謡将からしても変にダアトが混乱するよりはそっちの方がいいって思っただろうしな。だから多分じゃあるけど後々を考えて謡将からいい手だってアプローチしたのも考えられる・・・まぁどっちにしたってフォミクリーを使うって決めた時点で、結局モースも預言を実行することだけを絶対なんて言えないんだけどな・・・何せ預言には被験者の死が詠まれている上、その被験者は預言を尊ぶ組織の頂点のはずの導師。その導師が死んだのに預言通りに絶対に事を進めようとしないんだから、モースを大詠師なんて呼ぶ価値ないって思うけどな。俺は」
「・・・っ・・・アリエッタも、そう思う、です・・・」
まずはとすぐに考えられる理由を言えば予想していたと言った様子のアリエッタだが、モースとヴァンの関係を事細かに譜石帯にいた時に考えていた裏事情を推測とは言え話せば、流石にそこまでは考えていなかったらしく悲しそうに表情を歪める。
「・・・なんでモースの事を聞いたんだ?言っちゃなんだがアリエッタがモースの事を好きなように思えないんだけどな、イオンや謡将ならともかく」
そんな姿を見てふとこんな質問をしたことを疑問に思ったルークはその意味を問う、こんな質問をする理由に心当たりがないために。









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