必然は偶然、偶然は必然 第十五話

「いざというときはそれこそ力づくでまかり通る事も辞さない気でいましたが、インゴベルト陛下が僕の話にのみ注意してくれたことがいい結果に繋がりました。現にフリングス少将については陛下は何も仰られませんでしたからね」
「ただ元から大詠師がいたなら私がいることに不審を抱いていたでしょう。カーティス大佐がいたならいたででしょうが、見知らぬマルクトの軍人が新たな顔として加わっているのですからね」
「確かにモースがいたなら少将の存在を指摘していたでしょう。何故いるのかと過敏に反応する形で。ですが陛下一人ではそこまで気が回らなかったようですから、気付いていただかなくて幸いでした」
そこでイオンはフリングスの存在を全く気にしていなかった事を話題にし、笑顔で顔を見合せあう。



・・・そう、そもそもインゴベルトにモースはイオン達が謁見の間に来た時に気付くべきだったのだ。あの場にはフリングスもいたのだと。

ただフリングスという存在がいることによる危険もない訳ではなかったのだ。そこを突かれればイオンは何故ダアトに関係のないフリングスを連れてきているのかを説明しなければならないために。そうなればなし崩しにイオン達をインゴベルト達は排除にかかりかねない、一つきっかけを与えればそれに乗じかねない為に。

だがそんなキムラスカにとっての戦争の相手になり得るフリングスを敢えて謁見の間にまで連れていったのには大きな訳がある。それも今後イオン達にとって有利なアドバンテージを得るための訳が・・・



「・・・導師、まずはタルタロスに戻りましょう。ここにいてはインゴベルト陛下が何かに気付き我々を追ってきた場合、不利な状況に陥ります」
「そうですねリグレット。ではタルタロスに戻り急ぎバチカルより離れましょう、クラトスさん達もお待ちでしょうからね」
そこにリグレットが慎重な意見をバチカルを見ながらイオンに進言してきて、すぐ即断で頷き一同はその場を後にしていく・・・















・・・そしてタルタロスに戻ったイオン達はブリッジへと向かう。そこにいたのは先にモースを連行していった二人の姿があった。
「・・・どうですか、モースの様子は?」
「案の定このタルタロスを見て最初こそ訳がわからないと硬直していたが、何かまずいということには気付いたのか逃げ出そうと足掻きだした。今は兵士にモースを引き渡し、適当な部屋に見張り付きで閉じ込めてある。色々うるさいだろうが、それもダアトに着くまでの間だろう」
「そうですか、ありがとうございます」
その姿にモースの行方をイオンが問えばクラトスが事細かにその成り行きを報告し、納得してイオンは労を労い頭を下げる。
「ではフリングス少将、すぐにダアトに向かっていただいてよろしいでしょうか?ヴァンが待ち伏せをしているかどうかは微妙な所ですが、モースをダアトに連れていく役目は私自身が負わねばなりません。人任せにしてはモースが何がなんでも逃げようとするために手段を選ばない可能性がありますから、モースを逃がさない為に多少危険でもやらなければなりませんので」
「はい、わかっています。またダアトに着くまでしばらくかかりますので、皆さんは休まれてください。着いたらこちらからお知らせ致します」
「ありがとうございます、フリングス少将」
その答えを受け今度はフリングスに視線を向けいかにダアトに向かう事が重要かをイオンが述べ上げれば、真摯に頷いた上で休んでいいと笑顔を浮かべ返されたことにまた笑顔を持ってイオンは頷き返した。









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