必然は偶然、偶然は必然 第十五話

・・・そしてそれが同時にナタリアを王女の座から引きずり下ろすことにも繋がるのだ、イオンにルーク達の中で。



「・・・ですので陛下、こちらでナタリア殿下の真実を公表したいと思います。ですが元々殿下の入れ替えを行ったのはモースであり、陛下がその事実を知ったのはつい最近。その陛下がつい最近とは言えその事実を知っていたとなれば、何故すぐにその事実を言わなかったのかと民に貴族達からの批難が来ると予想されます・・・ですから陛下にその事実を知られている方がおられましたら、その方にもお話をしてそのような事実は知らなかったと言った体を取っていただいてよろしいでしょうか?」
「・・・確かにその事を知っていたとなれば、何故言わなかったと言われるであろうな・・・分かった、私からクリムゾンの方にはそう言っておこう」
「公爵も知っておられるのですか?」
「・・・うむ。ナタリアの事をどうするべきかと二人で話し合ってな・・・だが事が大きくなってはいかんとその事はまだクリムゾンとわししか知らぬから、クリムゾンに口止めさえさせれば問題はない」
「・・・そうですか」
・・・イオンの決意に満ちていると思わせる言葉はさりげに事実を沈黙してほしいという物から、誰がいまナタリアの事実を知っているのかという探りを入れた物へと変わる。そんな話の持っていき方にすんなり頷き公爵しか今はいないとインゴベルトから神妙な様子で答えを聞き、イオンはその事実を真剣に受け止める。
(成程、まだ時間は経っていないからゴールドバーグ将軍以下の臣下にあの時のようにナタリアの事実を明かすには早いと考えたのでしょうね・・・なら好都合です)
そこで内心考えるイオンの心中には公爵以外に事実を話していない訳をナタリアを力づくで排除しなければならない段階に入ってなかったからだとの推測があり、尚且つそれが好都合との見方があった。
「では陛下、公爵にお話を通しておいていただいてよろしいですか?そしてその事に関してはけして知らぬ存ぜぬを貫いて、他の方にその事実は言わないでください。こちらが事実を明かす前にその事実が漏れたとなれば、何が起きるかわかりませんので・・・」
「うむ・・・わしからそれは言っておくが、その事実を他の者に明かす気はない。流石にそのような事を軽々しく口にして事を露見されてはたまらないからな・・・秘密を共有する者は出来る限り少なくしたいから、言いはしない」
「ありがとうございます・・・では私はこれで失礼します、モースをダアトに連れて戻らねばなりませんから。事実を明かす時にはまた改めて、手紙をお送りしますので」
「うむ、わかった・・・ではな」
「はい」
その上で他の人には誰にも言わないようにと仰々しく口止めを迫るイオンに、インゴベルトもどれだけそれが重大かをわかっているためにすぐに頷く。その返事に頭を下げつつイオンが帰ると言えばインゴベルトはまたすぐさま頷き、その返答にイオン以下一同はまた頭を下げ謁見の間を後にしていく。そしてその場に残ったのはそんな後ろ姿をただ複雑そうに見つめるインゴベルトのみとなった・・・















・・・そこから謁見の間から場は代わり、城を出て下の階層に移りバチカルの入口を出たイオン達。周りに誰がの目がない現状を確認し、バチカルを出るまで黙っていたイオン達は口を開く。
「フフ、これでうまくいきますね」
「あぁ、これでキムラスカが無理矢理にマルクトとの戦争に踏み切ることは出来なくなるだろうね」
開口一番成功だと心からの笑みを浮かべるイオンにウッドロウ。そこには一切の後悔も何も負の感情は浮かんではいなかった。







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