必然は偶然、偶然は必然 第十五話

「いえ、ケセドニアに着いた際に偶然ルーク殿と共にナタリア殿下にお会いしたのですが・・・ルーク殿のお話によれば陛下の命に従わなかったことによりこちらに送り返されたとのことをお聞きしたので、このバチカルに戻って以降はどのように殿下はされているのかと思ったのでお聞きしたのですが・・・どうされているのですか?」
「う、うむ・・・・・・ナタリアはこのバチカルに戻った後はわしの命に従わなかった罰として謹慎を命じた。部屋の中にも外にも見張りの兵士を置いておる。とは言えその上でもう一度やったなら王女の地位を剥奪するとルークの話を聞いていたからか、今の所は大人しくしているがな」
「そうですか・・・」
だがいきなり核心を突くほど考えなしに行動する気のないイオンは世間話のような形で話題を振れば、少しホッとしたように気を抜き正直に今のナタリアの現状を話すインゴベルトだが、その会話に頷きつつもイオンはその中身からある結論を導いていた。
(どうやらナタリアには真実を明らかにしていないようですね。その上で恐らく今その扱いに今困っていると言った所でしょう)
・・・ナタリアと聞かれ動揺し、嫌なところを突かれない安心感からか聞いてもいないルークの話から大人しくなったと口にした。そんな判断材料があることからインゴベルトは真実を知っていて、ナタリアの扱いに困っていると見た。
(・・・陛下からすればいかに困ったことをしようにもナタリアへの情を捨てきれないのでしょうが、彼女にはキッチリ報いを受けていただきますよ。血統がどうかなど関係無く、王女としての責務を放棄したばかりか私情で事を推し進めてきた報いをね・・・)
だからこそ攻め方の方向性が決まった。イオンは情けを向けることもなくナタリアを潰さんと、眉間にシワを寄せ口を開く。
「・・・陛下はナタリア殿下に対し、どのような処遇を施そうとお思いですか?」
「・・・どうしたのだ、導師。藪から棒に?」
「いえ、一度ならともかく二度陛下の意向に背かれた殿下はどうなるのかと思いまして・・・確かキムラスカの法に照らし合わせればどう低く見積もっても、その地位の剥奪は免れないと思いましたが・・・いかがされるおつもりでしょうか?」
「・・・それは・・・」
いかにも重要と言わんイオンの疑問の声にインゴベルトは訝しげに返すが、至極全うなナタリアへの対応を訪う声を更に向けられ視線をさ迷わせる。



・・・インゴベルトは気付いていない、イオンの言っていることがキムラスカとして答える必要のない自国の内政に関する物であることを。その事実がいかに今インゴベルトが困惑しているのか、そう象徴しているようであった。



「陛下・・・まさか陛下ともあろう方が殿下に罰を与えることを殿下可愛さに躊躇っているのですか?」
「っ・・・い、いやそういうわけではないのだ。ただ少し、そう少し問題が・・・」
そんな煮え切らない態度にジトリとした責めるような視線を送れば、何とか言い訳を見つけようとインゴベルトは冷や汗をかきだししどろもどろになる。
「・・・陛下、もしやその問題とはモースが関係しているのではありませんか?」
「なっ・・・!?何故、それを・・・!」
・・・最早イオンに対してインゴベルトは為す術はない。モースと口にされたそれにインゴベルトは誤魔化す事もなく、ただ驚愕する以外に出来なかった。









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