必然は偶然、偶然は必然 第十五話

「それでですが陛下・・・陛下に1つお願いしたいことがあります」
「うむ、なんだ?」
「これよりモースを陛下にこの場に呼んでいただきたいと思っているのですが、私がダアトの恥部とも呼べるような内情を明かしたのは是が非でもモースをダアトに連れ帰る為の理由を陛下に理解していただく為なのです。ですので陛下にはモースに何を言われても、彼を助けるような行動を取っていただきたくはないのです」
「・・・モースを助けるなと?」
「はい」
・・・その次の手とはインゴベルトがモースを助ける気持ちを起こさないよう歯止めをすること。
そのためのイオンの重要なのだという願い出の声に首を傾げるインゴベルトに、すかさず畳み掛ける。
「モースの行動はその大詠師の地位に見会うものとは言えないような行動です。無辜の教団員を何人も自らの私欲の為に陥れてきたのですから。そんなモースに対して私だけではなく詠師達とも協議した上で是非彼に戻っていただこうと協議したのですが、その目的は余罪を含めた上で彼を査問するためです。そしてその結果次第では彼から大詠師の地位を剥奪することも私達は視野に入れてます」
「何っ・・・?・・・いや、それも当然か・・・」
モースの地位の剥奪、取った行動からそれも有り得ると言うイオンに先程のやり取りから擁護に対する気持ちが弱くなっているインゴベルトは一度は疑問視する声を上げかけるが、すぐに納得の声に変わる。
「そんな彼が往生際悪くその査問を避けようと言うなら、キムラスカに庇護を求める以外にありません。ですが彼をここで引き渡していただかない事にはこちらも困るのです。のうのうと罪を償うこともなく大詠師として平気な顔をされては、それこそダアトの恥さらしになります。彼がそのように動けば動くほどに・・・ですからここでモースを引き渡さないと陛下がおっしゃるならその時点で導師の権限を持って預言士をキムラスカ全域よりダアトに引き上げさせ、以降はキムラスカに住むものには預言を詠まないようにとの達しをします」
「なっ!?そ、それは・・・!」
そんなインゴベルトにイオンは核心とも言えるキムラスカでの預言廃止の強制停止も辞さないと出し、まさかの宣告に驚愕させた。
「陛下、我々はそれだけ本気だと言うことです・・・陛下もご存知かと思われますがモース率いる預言保守派と私の預言改革派と呼ばれる2つの勢力があります。とは言えこれはあくまで預言に対してどう思うかの思想の対立の現れであって、どちらが正しいのかという正解はありません。そして預言を重要視しているからと言って、何をやっても許されるということではありません。むしろ預言を扱うからこそ正しく人を導く事が重要になりますが・・・今の彼にはその資格があると認めるには無理があります。ここで彼を止めねばいずれはまた預言達成を大義にして人を犠牲にし、影で悲しむ者が出てくるでしょう。いえ・・・それだけならまだしも今度はキムラスカの中より自らにとって都合のいい者を選出し、裏よりモースはキムラスカを侵食しかねない可能性すらあります・・・」
「・・・っ!」
そこにイオンはいかにもと言った様子で導師として悩ましげに真剣な想いを述べていくが、さりげにキムラスカも被害に遭うやもという内容を流した事でインゴベルトがハッとした様子で目を見開く。インゴベルト自身今までの話から全く有り得ない話ではないと流れから感じてしまったのだろう・・・そんなモースに対しての不審が見える姿にイオンの弁論は静かに鋭さを増していく。







10/22ページ
スキ