必然は偶然、偶然は必然 第十五話

「ですがすぐにでもバチカルに向かわねばならない出来事がありましたので、こちらにまた来させていただきました」
「うむ・・・して、その出来事どは?」
そんな物騒な目を元に戻して頭を上げるイオンに早速インゴベルトは訳を問うが、そこでイオンは辺りに目をやる。
「・・・申し訳ありません、陛下。出来れば出来る限りの人払いとこの謁見の間への入場の制限をお願いします、この話は少し公にするにははばかられるものになりますので・・・」
「・・・ふむ、いいだろう。皆、少し下がれ。その上で入口にいる兵士には誰が来ても通すなと伝えよ」
「はっ!」
この状況を更に磐石の物とせんとイオンはそこから重大な事だという空気で人払いと入場制限をしてほしいと申し訳なさそうに願えば、インゴベルトは少し考えその願いを受け入れ兵士にさっと指示を出す。一人の兵士の返礼と共に、謁見の間から兵士達は退出していく・・・
「・・・さて、人払いは済んだ。話を聞こうか」
「はい、お話します」
そして兵士の姿が謁見の間から無くなった所でインゴベルトが話を進めるよう言えば、イオン話を始めだす。
「・・・まず私がバチカルに再び参った理由ですが・・・それはモースにあります」
「モースに?」
そこで話題に上げるのはモースが理由という物。どういうことかと興味を持ったインゴベルトにイオンは続けていく。
「はい・・・私はダアトに戻った際、私付きだった導師守護役のアニスという者からある不審な態度を目撃しました」
「不審な態度?」
「はい。とは言えここではどう言った物かと具体的に申し上げるのは省きますが、その態度から私は彼女の背後関係を調べることにしました・・・そこで私は知ることになりました、彼女がモースに僕の行動を知らせるために付けられたスパイであることを」
「何・・・?あの者がモースより送られたそなたのスパイであったというのか・・・?」
「残念ながら・・・」
そこに更にアニスの事実を明かすが、インゴベルトは少し意外そうなリアクションはするもののそこまで驚いてはいない・・・まぁそうだろう、イオンが言ったのは言ってしまえばあくまでダアトの醜い水面下を晒した物にしか過ぎない。それをキムラスカの王であるインゴベルトが親身になって驚くような義理はどこにもない・・・ただそれが本題ではなく段階を踏むためだと理解しながら言っているイオンは悲しいと顔を歪めながらも、更に先に続けていく。
「・・・ただそこで導師守護役の人事の権限を持っているのはモースという事を思い出した私は詠師達に協力を仰ぎ、更にアニス以外にモースの手があるやもしれない導師守護役の背後関係を洗うべく調査をしました。そこでわかったのは全員、とは言わずとも導師守護役の娘達はモースのスパイを兼任しているというものでした」
「何っ・・・そこまでしていたのか、モースは・・・?」
「はい、それだけモースは私の行動を把握しておきたかったのでしょう」
次に出したのは他の導師守護役もモースの息がかかっている者が多かったというもので、その事実にインゴベルトも先程より驚きが増した様子を見せる。だがここでさりげに大きなポイントとなるのは詠師陣の協力を得られているというところだ。
「ただ詠師達の調べによればその娘達はアニスよりは重要性は低く、もし何か私に変わった事があれば報告しろという物程度の指示しか出されていなかったとのことです。彼女達は自身がスパイをしていることの自覚も薄く、導師守護役の娘達の間で別段その事で話し合った事もないそうですが・・・その中で私と詠師達はその娘達にとある共通点を発見しました」
「・・・なんだ、その共通点とは?」



「その娘達の家族が少なからずモースが裏で糸を引く者から金を借りており、もしもアニスがダメになった場合の予備になり得る存在だった・・・という共通点です」



「なっ・・・!?」
・・・そしてイオンは前置きを置いた上でその娘達の共通点を発表した、モースの画策により借金をしていることとその立場からアニスがいなくなった時の代わりになり得る存在だという共通点を。



流石にインゴベルトもモースあまりのゲスなやり方を聞かされ、絶句といった声を上げた。










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