必然は偶然、偶然は必然 第十五話

・・・そんな一幕がありつつも数日が経ち、タルタロスはバチカルの近くにまで辿り着いた。






「・・・ではここでタルタロスには待機していただきましょう」
「えぇ、このままタルタロスで港に入港しては目立ちますからね。そうならないようにするにはここで待っていただいた方がいいです」
バチカルを遠目に確認出来る位置に来れた所でタルタロスを止めたイオン達はブリッジ内にてこれからの手順を打ち合わせる。
「インゴベルト陛下もモースも僕達がバチカルに戻ってくるなど露にも思っていないでしょうからね、虚を突けば十分にこちらに流れを引き込む事は可能でしょう。それどころか一気に主導権を握ることは可能です」
「それもイオン様にかかっていますが・・・まずは城に行きましょう。そうしなければ始まりませんからね」
「はい、では行きましょう」
それで鍵を自身で握ることを理解しているイオンはフリングスの勧めに従い、早くバチカルに行かんとウッドロウ達とフリングスだけを引き連れタルタロスを後にしていく・・・















・・・そして少し歩きバチカルの中に入ったイオン達は誰にとがめられる訳でもなく、悠々と城の前に辿り着く。
「すみません、少しいいですか?」
「はっ、これは導師様・・・どうされたのですか、一体?」
「これより陛下にお目通りを願いたいのですが・・・火急の用ですのですぐにお取り次ぎをしてほしいと言ってはいただけないでしょうか?それでついでに今陛下の元にモースがいるかどうかを呼ばずに聞くだけでいいので、聞いていただいてよろしいですか?出来れば今すぐにお願いします」
「はっ、では少しお待ちを・・・」
そこですぐに城の前にいた兵士に声をかけたイオンは時間を与えずインゴベルトに会わせるようにというのとついでにモースの所在があるのか聞いてほしいと2つの要望を出し、導師が相手ということで兵士は特に逆らうでもなくすぐに城に伺いを立てると入っていく・・・



「・・・お待たせしました、導師様。陛下はすぐに会われるそうです。それと今聞いた所では大詠師は陛下の元にはおられません」
「そうですか、ありがとうございます」
・・・そして数分もしてその兵士が戻ってきてすぐさまの報告を受け、イオンはにこやかに笑う。
「では中に入らせていただきます」
「はっ、どうぞ」
(ふふ、今モースが陛下の元にいないなら好都合です。精々この状況、利用させていただきますよ)
その笑顔のままに入城すると言えば兵士が丁寧な態度で応じるが、イオンは内心でほくそ笑んでいた。モースがいない方がやり易いと思っていた為に。









・・・そんなイオンを先頭にした一行は城の中に入り、謁見の間へと続く扉の中へと入った。
「・・・おぉ、導師よ。急にどうしたのだ?確かそなたはダアトに戻ったとモースが言っておったはずだが・・・」
「すみません、陛下。急に謁見の申し出などと・・・」
そしてインゴベルトの前にイオン達は再び立ったのだが・・・やはりいきなりの来訪に加え今度はなんのためにこの場に来た理由は検討がつかないのだろう。不可解だと表情で語っているインゴベルトにイオンはまずはと丁寧に頭を下げる・・・が、そこにあった目は獲物を逃さないよう鋭く細まっていた。








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