必然は偶然、偶然は必然 第二話

・・・最初は何がなんだかわからなかったティアの襲撃も、先を知り冷静になった今ならその声の元を冷ややかにルークは見る事が出来る。
(あ~あ~、なんでこんな自信たっぷりに他の国の人の家に殺人をしにくるのかな~)
屋根から飛び降りヴァンと杖を交える姿に、ルークは改めてティアの行動の浅はかさを考える。
(・・・でもここで事故とでも見せかけてブラウンパイナップル殺したらコイツ、どんな反応すっかなぁ?)
そんな浅はかさをどうしたら後悔させる事が出来るか、その手段を思いつきルークは人知れず口角を上げる。
(まぁそれやっちゃブラウンパイナップルは死んでも六神将は残るし、何よりモースっていう産業廃棄物残したまま俺は適当な訳つけられてアクゼリュスに強引に送られそうだからな。そんなんお断りだから実際にはやらねぇけど)
だがその手段は自身に不利益しか生まないことを知っているため、ルークは心中に留める。



・・・事故に見せかけヴァンを殺す事くらい今のルークなら出来る。それを見せつければティアは間違いなく動揺に動揺を重ね、崩れ落ちるだろう。だがそうしてしまえば残った六神将が何をするか分からないし、モースはヴァンへの罪滅ぼしの為にアクゼリュスに行ってもらうと言う理由をインゴベルト陛下に言わせるよう上申をしかねない。そうなればいかにイオン達がいるとは言え一朝一夕には状況を覆しにくくなるだろうし、何より今更ヴァンごときの為に悲しむフリをすることなどルークはしたくなかった。



(・・・そろそろあの時のように斬りかかってやるか)
「他人の家で何してんだよ、てめぇ!」
・・・と、状況が膠着しているティアとヴァンの二人を見て、ルークは予定を進めるべく剣を持ってティアに手加減しつつもセリフを本音に変えながら斬りかかる。
‘キィィィンッ!’
『ルークよ』
(ん、ローレライ?)
すると剣と杖がぶつかって互いが光り出した瞬間ローレライの声がルークの耳に届く。
『タタル渓谷に飛んだ後、そなたに鍵を送る。その木刀では威力が心持たないだろう・・・用件はそれだけだ、健闘を祈る』
(あぁ、わかったよありがとう・・・・・・ただなんで鍵って言ってるのに、あんな強くて敵を切ったりボコボコに出来るんだろう?今更だけど・・・)
ローレライからの言伝を聞きルークは声が無くなった事をきっかけに、ローレライの鍵が下手な武器よりやたら強い事を今更ながらに考える。



・・・そのくだらない思考を深める中、ルークの意識は急激に闇へと消えていった・・・












「・・・ん?・・・あぁ、ここはタタル渓谷か・・・」
そして夜のタタル渓谷。花畑から意識を取り戻し身を起こしたルークは辺りを見渡しながら、タタル渓谷だと確信する。
「うん、鍵も手元にある。後は・・・コイツどうしようかな・・・ここで見捨ててっても、どうせ後々関わらなきゃなんねーし・・・」
その中で鍵が手元にあるのを確認しながらもルークは倒れこんでいるティアの姿を目撃し、ゆっくり考え込みながら見下ろすよう立ち上がる。
「・・・まいっか。少しの間の関係だ、話は適当に流しときゃいいから連れてくか・・・それに路銀がねぇと困るしな、辻馬車に乗るには・・・後でペンダントは返してもらうから使わせてもらうぞ、いいよな?」
そしてルークは辻馬車を使うにはティアのペンダントがなければ無理だったと思い返しながら、ルークはティアの耳元にかがんで膝立ちをして顔を近づける。



「ちゃんと墓前に返してやるよ、お前ら兄妹の墓前にな」



・・・ティアが起きていて聞いていたならあまりの声の冷たさに腰を抜かしていただろう。だがティアにそう言ったルークの顔は声の冷たさとは真逆に、愉快そうに笑みを浮かべていた・・・









協力者達の存在は焔の心を奮い立たせた



新たな出発に全てを変える決意を強める



時代に膿を残す存在の排除への決意を・・・



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