必然は偶然、偶然は必然 第十四話

「ま、私が焚き付けた理由ってのは面白そうってのもあるけどもうちょっとあるのよねー」
「む・・・なんだそれは?」
だがまだ理由、それもまともそうに聞こえる理由があると言われディムロスは真剣な面持ちになる。
「簡単簡単。今のまま背中押さずにいたらアリエッタの性格から、ヴァンの説得次第で流されて向こうにつくことも有り得るじゃない。だからそうしないためにこっちで手を打っといた方がいいって思ったのよ」
「・・・妥当、と言わざるを得んな。確かにアリエッタ君の性格からそうなり得る可能性は高い。ただルーク君の本音には反するだろうがな」
「そうそう、だからアリエッタに言ったのよ私。ルークは貴女と一緒にいたいって思ってるけど、無理矢理こっちにいてもらいたいとまでは思ってないって。だから貴女がルークと一緒にいたいって思うなら真剣に話を切り出して本音を聞きなさいって・・・あの娘、本当に真剣な顔して頷いてたから今頃うまくいってるんじゃないかしら♪」
「・・・失敗するとは思っていないのか?」
「大丈夫よぉ~。あの娘ルークの事好きって言ってたし、ルークもルークで真剣に聞かれたら答えざるを得ないっしょ♪」
「・・・そうか」
だが軽いノリで喋りつつも中身はちゃんとして受け答えをするハロルドに、ディムロスは次第に反論の言葉を失い納得する以外に出来なくなった。
‘コンコン’
「・・・今、戻った、です」
「あら~?早かったじゃない。で、結果は?」
と、そんな会話をしている所にアリエッタが部屋に戻って来た。だが明らかに嬉しそうな様子が見えるアリエッタにハロルドはニヤニヤしながらわかりきった結果を問う。
「・・・ルーク、一緒にいたいって言ってくれた、です」
「あらあら、良かったじゃない!」
「・・・(・・・カーレル、ハロルドが色恋沙汰に興味を示しているのはいいのだがこれでは近所のお節介おばさんにしか見えない。お前だったらこの姿を喜ばしい物と見るのか、悩ましい物と見るのかどっちなんだ・・・?)」
それで成功とモジモジと恥じらいながら報告された事にハロルドは楽しそうに喜ぶが、男1人場に残されたディムロスは今は亡きかつての友でありハロルドの双子の兄であるカーレルに想いを馳せる。半ば現実逃避の形で。
「・・・ハロルド、私は部屋に戻らせてもらう」
「あっそ。んじゃまた明日ね~」
「・・・あぁ、明日な」
だからこそさっさと撤退しようとディムロスは退室を言い出せば、ハロルドは興味なくヒラヒラと手を振る。そんな心ない見送りなど気にせずディムロスはアリエッタの横を通り、ルークのいるだろう部屋へと戻っていく。
(・・・ルーク君、もう君の周りの外堀はほとんど埋められているぞ)
・・・逃げ道を明らかに塞がれてるルークに対して少なからず同情をしながら・・・















・・・そんなハロルドの策略とアリエッタの純真さに男二人が翻弄されたケセドニアでの夜は明けた。尚、一人で悩んでいるルークの姿を見かけたディムロスはあえて何を言うでもなく沈黙した。なんだかんだ言ってもディムロス自身アリエッタに向こうに行ってもらいたい訳ではないし、その事実を言えばルークが気分を害するのは目に見えていたからである。










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