必然は偶然、偶然は必然 第十四話

「まぁ正直に言えばちょっと驚いたってくらいだよ。魔物に育てられた子供、なんて聞いたこともなかったしな。別に怖いとかよりそんな感じにしかならなかった、ってのが俺の感想だよ」
「・・・そう、ですか・・・」
「つっても何も知らなかったからこそってのがあるからなんだと思うぞ。何か知ってたら多分他の人と同じような事を言ってたのかもしれないけどな・・・ははっ」
昔アリエッタの事を知った時を思い出しつつ自分の感じた事を苦笑い混じりに話せば、ルークのその様子にアリエッタは少し安堵の含まれた笑みを見せる。
「・・・なんかちょっと嬉しい、です」
「そうか?別に大したことねーぞ、何も知らなかっただけだしな俺」
「ううん、いいんです。知らなくても、なんでも、ルークがアリエッタの事、普通に見てくれたことが・・・」
「っ・・・まぁアリエッタが喜んでくれたんなら別にいーよ」
知りたい気持ちと不安な気持ちが争っていたのだろう、悪くない本音を聞けて徐々に心からの微笑みをルークに向けたアリエッタ。対していたルークは少し頬を赤らめながらも顔を背け、気遣いの言葉をかける。
「・・・で、それを聞きに俺のとこに来たのか?」
「あ、えっと、それもあるけど、謡将との事も聞きに来た、です」
「・・・謡将の事?」
そんな体勢に気恥ずかしさを隠しきれずルークは用がないなら帰ってもらおうと口を開くが、ヴァンの事を今度は真剣に聞きたいと言われ表情を自身も改め向き直る。
「はい、ルークは謡将の事、どう思ってる、ですか?」
「・・・どう思ってる、か・・・」



・・・その真剣な眼差しにルークは察した。自らの恩人の一人であるヴァンに対し敵対するか否かを未だに迷っているからこそ、自分の考えを聞きたいのだと。



ならばこそ変に誇張せずにアリエッタに受け入れられるように真剣に答えるべきと、ルークは問いに対し口を開く。
「・・・ま、一言で現すには難しいな。ただ今だからこそ言えるけど、目的の為には手段を問わない人間であるのは間違いない。実際に俺も預言を欺くため、セフィロトごと消滅させる為だけに造ったような人だからな」
「・・・そう、ですか・・・」
「・・・ま、それでも身内には甘い人じゃあっからな。アリエッタが向こうに戻るってんなら、謡将はすんなりと迎え入れちゃくれるだろ・・・ただ俺はあんま勧めはしねぇぞ。あの人身内以外は徹底的に排除する上、気に入らない意見はうまい言葉を使ってやんわり否定するだろうからな」
冷酷さと優しさに似た甘さ、その2つが同居しているとルークは評する・・・ここで優しいとは言わないのは妹のティアに愛弟子兼部下のアッシュの暴走を対外的に一切罰することもなく、むしろ二人を罰さないよう放置すらしていた前科があることからである。それは厳しさという優しさをはらんだものではないため、罰さないのは甘いとしか言えないと自身も過去ファブレ邸に来たときの態度からルークは感じていた。
「・・・アリエッタでも、ですよね」
「アリエッタだからこそ、だよ。アリエッタなら優しく言えば戻ってくる、そう思ってアリエッタを六神将に戻すことを考えてるだろうな。そしてまず間違いなくアリエッタを戦わせようとする、俺達とな」
「・・・っ!」
そんなヴァンだからこそアリエッタは甘くも自らの所に戻ったら丁重には扱う、アリエッタ自身もそう言葉から理解したのだろう。確認を求めるような眼差しを向けてくるアリエッタに、ルークは更にヴァンの所に行ったなら戦う未来はほぼ確定と残酷ながらも真摯に告げた。












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