必然は偶然、偶然は必然 第二話

・・・なんだかんだ思いつつも別にこの旅が終わればもう2度と関わる事もなくなるからいいかという考えに行きついたルークは、部屋に戻る事もなくそのまま公爵達の所へ行った。



そしてそこには、かつて盲目に信頼を向けた・・・いや、向けさせられた師のヴァンの姿があった。
(久しぶりに見るな、このブラウンパイナップルも)
過去に戻ってきてから1ヶ月程にもなるのだが、その間ヴァンは屋敷に顔を出さなかった。故にルークからすれば、何十年ぶりかの対面だった。だがヴァンの顔を見ても今更ルークには敬愛の念は一切浮かばない・・・だがそれではヴァンの知るルークの姿ではないため、ルークは出来る限り昔の自身を思い出しながらその自身を演じていく・・・



・・・そして一通り話が終わりイオンを探しに行く前の最後の稽古を開始するため、ルークは中庭に行く。そしてヴァン指導の元に基本から稽古を始めた訳だが・・・
(今頃はイオンもタルタロスでジェイドにアニスと顔を合わせてるんだろうなぁ。まぁ面倒だろうけど我慢してろよ?俺もどうせティア連れてかなきゃならねーんだし)
目の前のヴァンさえ倒したルークにとってこのような温い稽古は退屈と同義。表情は真剣に作りつつも、内心はこれから会うイオンの事を考えていた。
(でもウッドロウ達の話を通したらイオンどういう反応すっかなぁ?まぁあいつの事だから間違いなくアニスよりは歓迎しそうな気がするけど・・・つーかそれ以前にあいつアニスを置いてきそうな気がしてなんねーけど・・・まぁそれならそれでいいか、別にアニスがいなかったら駄目だった場面なんて正直思い出せねーし)
むしろ状況を悪化させた事以外ねーんじゃねーの?・・・そんなことまでルークは思っていた。



・・・だが実際にアニスがいなければ状況を打開出来なかった場面は実質ほとんどなかったと言えよう。

精々ザレッホ火山に繋がるセフィロトへの道を見つけたのがアニスの手柄と言えるが、それもモース経由で知ったことだろうし丹念に調べれば誰かが仕掛けに気付いた可能性は十分に有り得る。

むしろルークの言ったように状況を悪化させただけの行動以外取ってないと言える。モースに情報を流していたせいでルーク達の行動は筒抜け、モースに仕えていたせいでイオンの命はアニスのせいで失われた、その上アリエッタはアニスを恨み戦わなくてよかったかもしれないアリエッタを死なせるに至った。

・・・そして何よりルークとイオンの二人を始めとした犠牲の元に成り立った世界に、混沌の災禍をもたらした。これは齢13程度の小娘をティアとともに英雄と奉りあげたダアトにも責任はあるが、それでも考え無しの行動を取り続けたアニス当人の責任問題が大きいと言える。



・・・やっぱりイオンはアニスをダアトに置いてきてんじゃねーのかな、だって役立たずだし。
そんなことを思いつつも、ルークは手加減した剣を人形にぶつけていった。









・・・そして稽古も一段落したところで、ルークは確信を覚えつつも耳をすます。その耳に届いてきたのは案の定、譜歌だった。
(やっぱりこのタイミングか・・・さぁ来いよ、今度は英雄じゃなく惨めなキチガイに俺が直々にランクアップさせてやっからさ!)
・・・あくまでも譜歌が効くのは、不意を突いた時か相手のレベルがある程度近い時の話。レベルも違いティアが来ることも事前に知っているルークに譜歌は効きはしない。周りが続々と弱りゆく様子を見ながら、ルークはその瞬間を楽しみに待ちわびる。



「・・・ようやく見つけたわ、裏切り者ヴァンデスデルカ覚悟!」






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