必然は偶然、偶然は必然 第十三話

「ではこれよりしばらく貴殿方はモースの強引な行動の裏付けを取ると同時に、モースが戻ってきた時の査問会を開けるように支度してください。僕はバチカルに行きモースをこちらに送るようにしますので」
「えっ?導師がバチカルに向かうのですか?」
「えぇ。いくら表向きの戦争に繋がる事由を無くしたとは言え、モースがてぐすね引いてアクゼリュス崩落をただ待つとも思えません。ですから僕は執拗に戦争を強要するだろうモースをこちらに送り届けます。キムラスカにいらぬ甘言を吹き込ませない為にも」
「・・・大丈夫なのですか?こう言ってはなんですが、大詠師はそれこそ形振り構わず導師をキムラスカの力を借りてまで捕らえかねません。そのような場所に貴方が行かれては危険かと・・・」
「大丈夫ですよ」
その上で後の対応を詠師達に頼み込むイオンだが、イオン自身がやろうとするモースのダアトへの送還に詠師陣が心配そうな視線を送ってくる。だがイオンにはまた秘策がある、故に自信を覗かせた笑みを浮かべた。
「僕の考え通りに行けばモースは僕に逆らう事は出来なくなります。もし逆らったとてこちらには不利はないでしょう」
「して、その考えとは・・・?」
「まぁそれは後々に置いておきましょう、今すぐ話をしてもいいのですがこれは少し時間がかかりますし貴殿方にもやっていただきたい事ですからね」
「は、はぁ・・・わかりました・・・」
しかしその説明にはまた時間がかかる。故に後回しにすると言われ、詠師陣は釈然としないながらに肯定するしか出来ない。
「あぁそれと、ヴァン率いる神託の盾は除籍処分にと言いましたがそれはディストがダアトに戻って来る時までは公にしないでください。彼はヴァン側の技術的な首脳者ですから、ダアトに戻った機を見て隙を突き捕らえてください。ただ殺してはいけませんが、彼自身には戦力はほぼないに等しいので椅子さえ奪えば然程難しくないはずです」
「は、はい。しかしディストはダアトに来るのですか?反旗を翻したというのに・・・」
「こちらから追手を放ち追われている立場だと彼が思ったなら戻ってこないでしょうが、彼はモースとも繋がっている節があります。無闇に警戒さえさせなければ戻っては来ると思いますが、こちらで彼を見つけたりなどしたならその時にヴァン率いる神託の盾を除籍することを公にするよう言いますので、そのように動いてください」
「成程、そう言うことでしたら」
そんな詠師陣に今度はディスト個人に対しての処遇を伝えるイオンに、また釈然としない顔をしていた詠師陣だがちゃんとした説明を受け納得し頷く。
(フフフ・・・逃がしませんよ、ディスト。貴方には是非ともルークの為に大爆発について、研究していただかねばならないんですからね)
その様子を見ながら絶対にディストは逃がさんと包囲を固めていくイオンは心中で笑っていた。



・・・大爆発。二人とも死ぬかもしれなかったルークとアッシュが、ルークの体を乗っ取る事で奇跡的にアッシュを生かした完全同位体にのみ起こりうる現象である。

音譜帯でルークとイオンはその大爆発で生き残れたアッシュの事を初めこそは良かったと喜びはしたが、徐々に当の本人がキムラスカを崩していく姿に憤慨を覚えていった。

そんな時に過去に戻ってきた訳だが、イオンはタルタロスでディストと相対した時にふと大爆発の事を思い出した。このまま事を考えなしに進めれば可能性は以前より低いながらも、また自分達が殺すアッシュのせいでルークは大爆発の驚異により死なねばならないかもしれないと。

・・・そこでイオンは考えた、ディストを捕らえて大爆発を確実に起こさせないように研究させてはどうかと。

しかしタルタロスで捕らえようにも後々を考えると拘束し続ける事は六神将が助けに来るだろう事から、無理がある。そう思ったが故にイオンはあえて逃がしたのだが、今度捕まえたら研究を達成するまでは逃がす気は更々なかった。







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