必然は偶然、偶然は必然 第十三話

「このまま貴女に神託の盾の一員として話を聞いても、結局個人的な事で要点を言わずじまいで終わらせようとする姿が目に浮かびますからね。ですからもういっそのこと罪状もあることですし、神託の盾を辞めていただき質問ではなく尋問に切り替えた方が収まりがいいと思いました」
「待ってくださいイオン様!そんなことしなくても兄の事を知った今、私は全てお話します!」
「だから言ったでしょう、既に貴女の罪状は神託の盾を辞めさせるには十分過ぎる物なんです。その上貴女は今言いましたね、兄の事を知った今なら全てを話すと。その言葉を裏返せばヴァンが裏で何かしていたことが確定していなかったら、それこそ個人的な事と貴女は言って何も言わなかったでしょう・・・それとも今更貴女に僕の信頼があるなど、本気で思っているのですか?」
「!それ、は・・・」
焦るティアに信頼も酌量の余地もないと容赦なく突き付ければ、今までのイオンから否定の材料がないと感じ取ってしまい視線を反らし言葉を失う。
「トリトハイム、僕の処置は間違っていると思いますか?」
「いえ、妥当かと思われます・・・話を聞けば聞くほどグランツ響長には信用を置ける材料がなく、また神託の盾から除籍させるには順当であると思われますので」
「成程、貴殿方はどうお思いですか?」
「・・・我々もトリトハイム詠師と同じ意見です、導師」
「・・・!」
そこからイオンにトリトハイムに視線を向け同意を求めればすぐさま同意で返され、また他の詠師に同意を求めれば残りの詠師達は顔を見合わせた瞬間全員が首を縦に振り自分達も同様だと詠師の1人が返す・・・その瞬間、ティアの顔に絶望の色が刻まれた。
「ありがとうございます。では誰か兵士を連れてきてはいただけませんか?ティアもですが、アニスももう牢に繋げてもいいでしょうからね」
「「!?」」
「はい、では私が」
そんなティアなど見ずに聞くことを聞いたイオンがもうさっさとご退場を願おうと兵士を連れてくるよう頼めば、二人がたまらずイオンを向くが詠師の1人はまた二人を気にする事なくさっさと退室していく。
「さて・・・兵士が来る前に言っておきます、もう貴女方が日の目を見るような事はないと思っておいた方がいいですよ」
・・・そしてイオンは二人を冷酷に見下しながら告げる、英雄への道になど戻れない罪人への道筋を。
「アニス、もし貴女が自らに降りかかる災禍を恐れ逃げ出したとしても無駄ですよ。その時はいかなる手段をもってしてでも貴女を捕らえます・・・まぁ逃げ出しても逃げ出さなくても大方、貴女の結末に大きな差はないでしょうけどね」
「!・・・ック、ヒック・・・」
まずはとアニスに暗にどうあがいても死以外の結末しかないと告げれば、先程から泣いていたのもあり悲嘆にくれ絶望に満ちた涙を流す。
「ティア、貴女も逃げ出したとしても無駄です。とは言え逃げ出したなら逃げ出したで、貴女はアニスより酷い目にあいかねませんがね」
「えっ・・・っ!?」
続いてティアにイオンは照準を向けるが、隙さえ突けば逃げれる最適な技術を持っているティア。何もかもを捨てて逃げた場合を想定し抑止力となりえる予想をほのめかすイオンに、何を言われるかとティアは恐怖に顔を固まらせた。







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