必然は偶然、偶然は必然 第十三話

「貴女はヴァンのやっていた事をおぼろげながら知っていたのに、それで貴女は何故行動に移さなかったか・・・まぁこれは貴女の事ですから兄がまだ何もしていないから、だから見極めてから行動すればいいなどと思ったのでしょう。ですが事が起こった後にこうこうこうでした、その際に起こった被害に関しては御愁傷様でした・・・の一言で終わらせていいものではないのですよ。それがわからないのですか?」
「で、ですがそれはイオン様が止められました!被害は何も・・・」
「馬鹿ですね、貴女」
「なっ・・・!?」
イオンはそんなティアの愚行を批判するように静かに攻めるが、全くティアはイオンの言うことを汲み取ろうともせず何も起きてないと叫ぶ。が、そんなティアに馬鹿だとイオンは一言で一蹴する。
「貴女、アクゼリュスにキムラスカよりヴァンと共に兵士が派遣された事くらい知っているでしょう。その兵士が何故あのアクゼリュスで全く姿を見せなかったか、聞いてなかった訳ではないでしょう」
「!?そ、それは・・・っ!」
まずはと段落を置くため以前もあったヴァンによる兵士殺しの事実を突き付ける。これはアッシュがティアにそれを明かしていたことから反論が出来るはずもなく、どもった声しか出ない。
「ホラ、この時点でヴァンが何もしてないなどと言うような戯言はもう吐けないでしょう。それにヴァンがキナ臭い何かを企んでいるかも、と思っていたのなら裏でこれくらいの事をしているのではとの予測も立つでしょう。事実、ここにいるリグレットは裏でそれこそ今言ったようなヴァンの行動を目撃してきたし実行してきたと言ってくれました・・・なのに貴女はそんなことを考えも出来ず、我々に何も言わず個人的な事と言った。言ってみればこれは貴女の見識の甘さ及び迂闊さが招いた事態でもあるんですよ、ヴァンが悠々と暗躍出来た事態はね。そう考えると哀れですね、先遣隊の方々は。だって貴女が何も言わなかったせいで、ヴァンにより命を奪われたのですから」
「・・・っ!」
そんな姿にすぐさま畳み掛けるようお前が誰かに報告をすればこんな事態にはならなかったと告げれば、ティアはイオンの冷たい目を見ないようにうつむきながらもカチカチと歯を鳴らしている。



・・・事実、ティアが誰かダアトの上層部にヴァンの事を告発するという選択肢を選べばヴァンの事を調べようとする動きくらいは出てきたかもしれないのだ。ただモースやヴァンの息がかかったものが大勢いるダアトでは相手次第では闇に葬り去られる可能性も大いに有り得たが、ティアは誰かに告発するという選択を選ぶ事すらなかった。誰かに伝えれば兄が止まる事は可能性としてはゼロではなかったというのに。



(自分が正しいと信じて疑わず、自分が動かねば物事は解決しないと考えている・・・一人の力などたかが知れているのに、自分は特別な存在だと勘違いしているからこそティアは一人で行動したのでしょう。愚かですね、ヴァンの妹とユリアの血を引くというだけで周りを見ることもなく全て解決出来るなどと勘違いするなど・・・まぁそれは、以前からそうでしたが)
・・・結局、ティアは周りを信頼などしていなかった。それは明らかに上から目線を崩さなかったルークに対してだけでなく、国は違えど軍人においての地位に歳で上の立場にいるはずのジェイドも全く信頼しない形で。そうでなければ以前においてワイヨン鏡窟でヴァンを追い掛けた時、ルーク達にも声をかけていただろう。本当に仲間だと思っていたのなら共通の目的に向かう為、多少の迷惑をかける事を謝る形で・・・まぁ現実は一人突っ走り、ルーク達が来なければアッシュ共々殺されていただろうシチュエーションに陥っていたのだが。
(・・・まぁもう別に構いませんがね、ティアにはこれからずっと一人になれる場所にいてもらいますから・・・ね)
・・・ようやく兄のしでかした事の重大さに気付き震えるティアに向ける情けなど、イオンの中には一切存在しない。もう独り善がりの行動などさせる気はないイオンは代わりに孤独をくれてやろうと、口元を笑ませ言の葉を紡ぐ。










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