必然は偶然、偶然は必然 第十三話

「貴女も随分と愚かな事をしましたね、アニス。スパイという身の上では確かに僕に話をしにくい物はあったでしょう。しかしそれでも分別という物くらいはあったでしょう、和平という国と国の平和を願う行動をぶち壊さない程度の分別はね」
「そ、それは・・・で、でも仕方無かったんです・・・ちゃんとした報告書を渡さないと、パパとママを殺すってモースが言うんですから・・・」
「・・・オリバーとパメラ、ですか?」
そのままにアニスを糾弾していくイオンだが、両親を辛そうに盾に出し見上げてきたその姿に眉を寄せ声を止める。
「何故そこでオリバーとパメラが出てくるのでしょうか?」
「それは・・・私はパパとママの借金を肩代わりしているモースにお金を返すために、イオン様のスパイをやれって命じられてるんです。ちゃんとやれなかったり、逆らったりしたらパパとママを殺すって言われて・・・」
「アニス・・・」
「「「「・・・」」」」
糾弾を止め話を聞こうと質問したイオンにアニスは自身のスパイになった経緯を悲痛そうにうつむきながら話すが、同情しているのは声を上げたティアばかりで詠師陣にイオン達は呆れたように顔を歪めていた。
「・・・では質問を追加しましょう。二人はどれだけの額を借金をしているのでしょうか?」
「えっ・・・そ、それは、私にもわかりません・・・パパとママは今でも人の為にって、騙されてるのとかそんなの関係無くお金を使ってるから・・・多分、何十万ガルド以上は確実に・・・」
「・・・成程」
その顔を厳しい物に戻し追加の質問をするイオンにアニスは怯えつつ顔を上げ答えるが、望んでいた答えを引き出した事にイオンは詠師陣に振り向く。
「貴殿方は今の話・・・どうお考えになりましたか?」
「・・・話にならないと思いました。これは同情の余地どころか、同情をする方が愚かだと胸を張って私は言えます」
「「!?」」
「成程・・・どうやら皆さん、僕と同意見のようですね」
その感想を詠師陣に求めればトリトハイムは目をつぶり首を振りながらアニスに辛辣極まりない事を述べ、イオンが残りの詠師陣を見れば同意だと言わんばかりに首を縦に振る。
「・・・そんな、なんで・・・!?」
「同情されてしかるべき、かと思ったのですかアニス?そんなことあり得るはずがないでしょう。モースが裏につく事になったのは結局、原因は貴殿方タトリン一家の選択以外の何物でしかないのですから」
「私、達・・・!?」
そんな返答に目を揺らし信じられないと語るアニスにイオンは両親を含めた上で自業自得だと突き放すが、それこそ心外だったと愕然とした声を上げる。
「そうではありませんか。例えばオリバーにパメラ、彼らの行動がいかに考えのない行動かを示している。何十万ガルド以上?そんな大金など貸してくれと言ったところで、誰が貸しますか?精々一般家庭に貸せるのは1万ガルドが関の山程度なのに、それを全く理解することもなくお金を借り続けている。これが人の為ですか?」
「そ、それは・・・わ、私も反対はいつもしてました!けどパパとママはそんなこと聞かないで、人の為になるならって・・・」
「両親の暴走を止めようとした、まぁそれはいいでしょう。僕が言いたいのはここからです」
「・・・!」
まずはとアニスの両親の常識を疑う声を向けると精一杯やったんだとアニスは反論するが、イオンがまだ話が続くと言ったことに否応なしに言葉を無くす。








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