必然は偶然、偶然は必然

ND2048、エルドラントでの戦いから三十年の月日がたった。



エルドラントの戦い、それから三年が経ち世界に聖なる焔の光は還ってきた。かつての英雄の奇跡以下の確率からの生還、国は盛大にこの奇跡を祝い喜んだ。そして世界の人々は言葉こそ違えど、一様にこう思った。‘これはいいことの前触れだ’、と。



しかし、それは世界の瓦解の前触れだった。









・・・国に戻った聖なる焔の光は一年程もすると、当時まだ王座に座っていたインゴベルトから王座を譲り受けた。それを受けた聖なる焔の光はまず自身の体験からレプリカ保護の問題に取り組んでいった。これは兼ねてからインゴベルトが王座に着いていたときの問題だったので、妥当な判断だと臣下は思った。だが、ここからが世界の瓦解の始まりであった。

聖なる焔の光はレプリカ保護の問題に当たり、インゴベルトとは全く正反対の方向性を示した。インゴベルトは少しづつ確実に時間をかけて住居や食料問題に向かい合おうと、民達に負担の少ない長期解決方法を目指して対策をとっていた。しかし聖なる焔の光は違う。彼は一刻も早い対策が必要だと、それらの政策を考えもないと言えるくらい短期間で行うといってきた。更にそれ以外にも、彼は自身の思い込みを全面的に押し出した政治判断だけを臣下に強要していった。

また、彼の側にいる女王、彼女もインゴベルトのやり方はまだるっこしい物だと思っていたので、女王も早く問題を解決出来る聖なる焔の光のやり方に全面的に協力する姿勢を見せていた。そのことから臣下は王を説得出来る味方を得ることが出来ず、ただ頷くか処罰覚悟で王に進言するかの二択を常に念頭におくしかなかった。

・・・そんな状況が続けばまず起こるのが民の国離れ、つまり亡命。聖なる焔の光の政治はまさしく愚かと言えるやり方でしかなかったため、その数も半端な数ではなかった。だが、民の向かう先にダアトの選択肢はなく、マルクトの一国だけだった。それは何故か?ダアトもまた、同じような現状のためだった。



・・・ダアトにいたのは聖なる焔の光と同じく、英雄と呼ばれた二人の女性。彼女達も世界を救った英雄としてダアトでユリアの子孫はユリア再来といわれ、黒髪の少女は英雄という名を利用し、二人ともダアト内での発言に影響が出るようになっていた。そんな二人が進言したダアトがとるべき対策はキムラスカとの同調であった。ダアトは聖なる焔の光が帰って来るまでの三年間、教団を落ち着かせようとしていたためレプリカ問題については遅延策をとらざるをえなくなっていた。

しかし、ダアトも落ち着いたためどのようにするかという会議を開いたときに、二人はキムラスカとの同調を指示した。その時は英雄二人が同調を指示したのだからと、ダアトもキムラスカと同じようにしていった。そして結果は同じ、そのことからダアトは無能との烙印を民に押されてしまった。



・・・そして残る一国、マルクトもあまりいい状況とは言えなかった。キムラスカとの同調を唱えたのがまたこのマルクト内にも存在した。身分は伯爵、更に英雄と名を打つことから大概の意見はマルクト内でも通ってきた。しかし、皇帝のピオニーはその意見は一蹴した。そして意見を一蹴したピオニーの元には難民の報告が後を絶つことは無くなった。ピオニーに縋れば何とかなると思った二国の亡命の民達は日ごとに募り、伯爵とピオニーの懐刀と呼ばれる軍人は日ごと対応に追われていった。



そんな状況に、ある一言が何処からともなくでてきた。‘預言があったころはよかった’

・・・この一言から全てはまた悪い方向へとむかっていった。マルクトはともかく、キムラスカとダアトの二国には預言復活の気運が強くなっていき、今はきっかけひとつだけでもクーデターが二国に起きかねない状況だ。

更にマルクトにもまた問題が起きた。ピオニーに病が襲い掛かったのだ。預言復活の気運が見え始めた辺りから更にマルクトに難民が入り込んできた。その応対に追われ続けたピオニーは休む暇もなく仕事を続けたため、心労と疲労からとうとうピオニーもダウンしてしまった。今現在は懐刀と伯爵がマルクトの指揮者となっている。



その状況を重く見たのは空高くから下界を見ているローレライだった。










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