必然は偶然、偶然は必然 第十二話

「ふぅ・・・」
・・・一方その頃、リグレットは一人部屋で椅子に座って机で肘をつきながら憂鬱そうにタメ息を吐いていた。
「なんなんだろうな、あいつは・・・ヴァンと違うことは重々承知はしていたが、あぁも違うとどうもな・・・決定的に言えるのはヴァンと違い、居心地の良さをウッドロウに私は感じている・・・くっ、私はどうしたというのだ・・・」
いつもの毅然として軍人の顔を標準装備したリグレットはどこに言ったのかというくらいに、リグレットは自分の中に芽生えた感情に複雑な表情になりうつむく。






・・・ウッドロウとヴァン、この二人は共に形は違えど人を導くリーダーとして動いていたがそもそも形が違うことから分かるようやり方もそれに見合い、違っていた。

ヴァンのやり方は厳密に言えば恐怖政治のやり方である。味方は確かに優遇しているように思えるが、反面敵及び関係無い人間にまでヴァンは情けをかける気は毛頭ない。そんなやり方故に必然的に付いていく者は限られてくる。一部以外に望まれない事をしているがために。

その点ウッドロウのやり方は至極全うな善政と言えた。絶対に相容れない者などは流石に違うが、それでもヴァンと違い味方以外を敵と断じることはない。そして甘いだけかに見えるようなその顔の裏に、厳格に物事を判断出来る判断力もある。

・・・確かに甘いだけのやり方だったならリグレットもヴァンの方がいいと言っていたかもしれない。だが現実を受け止めた上で出すウッドロウの考えは、ヴァンより甘いのは否定できないがヴァンより非情ではないのを否定できないのも事実である。

そもそもヴァンに付き従うように動いていたリグレットは神託の盾をまとめていたのもあって、常に軍人であるよう自身を律した態度でいるようにしていた。そんな環境だったものだから、リグレットは次第に自身の経緯もあって周りに染まり振り返ることも忘れ過ごしていた。

・・・しかし人というのは元来情に基づき動く生き物である。そうやって神託の盾の人間として動くあまりにリグレットは抑えていた情に気付けず、その情に訴えかけたウッドロウにリグレットはヴァンから離れることを選んだ。ヴァンからはけして向けられる事が無かったであろう、優しさを持って。

・・・自分を神託の盾の人間として見るのではなく個人として見てくれた、そのヴァンといた時になかった居心地の良さをリグレットは確かに感じていた。そしてその居心地の良さにかつてないものを感じてもいた。






‘ガチャッ’
「あぁリグレット、ここにいたんですね」
「っ・・・どうされましたか、導師?」
そんな自らの中に生まれた何かわからない物にリグレットが苦しむ中、イクティノスを手にしたイオンが入ってきた事にリグレットは少々驚きつつ表面上は普通にしてたようにして丁寧に立ち上がり対応する。
「いえ、少しイクティノスさんから貴女にお話がしたいとのことでしたから来たのですが・・・よろしいですか?」
「イクティノスから?」
『あぁ、少しいいか?』
「・・・あぁ、時間はあるから構わない」
そこで出てきたのはイオンじゃなくイクティノスからの話と言われ、その声にリグレットは少し間を空けたが快く了承する。








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