必然は偶然、偶然は必然 第十二話

『俺がこのような形を取って二人きりになったのには言いたいことが二つあるからだ』
「二つ、ですか?」
『あぁ・・・まず一つ、これはウッドロウにだけは絶対に言わないでくれ。それは、俺はウッドロウがこの世界での生涯を終えたなら俺も一緒にこのソーディアンとしての生を終える気でいる』
「えっ・・・それは・・・それで、貴方はいいんですか?イクティノスさん」
『いいんだ、これはローレライにも言っている』
そこからまずと話を始めたイクティノスだが、二つと前置きをして一つ目を平然と明かされた自身の死の時期にイオンが驚愕をしてその姿を見つめる。
『話では聞いているとは思うが、俺も今ローレライから与えられた二度目の生を受けてここにいる。だが俺の体はこの通り、ソーディアンだ。もし何事もなければ、それこそ俺はまた千年以上生きかねない。ハロルドが俺を造ったからな、いつ死ねるか・・・正直怪しい物だ』
「・・・千年経ってもまだ機能として全く遜色ない力が出る、というのは確かにすごいことだと思います。でもだからと言って死ぬことは・・・」
『ふ・・・言ってみればこれはケジメだ』
「ケジメ、ですか?」
『あぁ、ウッドロウが老骨に鞭を打ってまでこの世界を救おうとしているのだからな。俺もその気概に協力しようと思いここに来た訳だが、ソーディアンが本来残されてきた役目は神の眼という物の存在を危惧してだった。だがこの世界には神の眼など存在しない上、下手に俺のような存在が残っていては後の世で悪用されかねないからな。ローレライの鍵のようにな。だからそう言った事を無くすのも含めた上で俺はこの生涯を終える気でいる、ウッドロウが死ぬのに合わせることでな』
「・・・死ぬのは、怖くはないんですね」
『あぁ・・・ディムロス、いやソーディアンのディムロスか。そのディムロスが言っていたが、俺達は長く生きすぎたからな。その上更に何千年以上生きるのは些か辛くなってくる。ならばせめて人並みの人生くらいで生涯を閉じたいのだ、自分が人として死ねるようにな』
「・・・それをローレライに頼んだんですね」
『あぁ、そうだ』
・・・そこから語る自分の結末に関して穏やかな口調、そして理屈も感情も併せ持った想い。その声を受け次第にイオンの声から反対の想いは無くなっていき、自然とイクティノスの想いを受け入れていった。
「・・・わかりました。自殺願望があるのならともかく、貴方の身の上では死を選べませんからね。この事は僕の心の内にしまいます・・・ですがなぜこの事を僕一人に?」
『何、順当に年齢で言えばウッドロウの方が先に逝くだろうからな。その時俺の事を知る者がいた方がいいだろうと思い、伝えたんだ。機会があればルークにも伝える気ではいるが、あいにくルークはここにはいないのでな』
「成程、だから僕一人なんですね」
そして納得したからこそ反対する気はない。イオンはウッドロウには黙ると伝えつつも何故自分にと言えば、状況的な物だと返されまた納得する。
『納得してくれたならありがたい・・・さて、次は二つ目だがこちらが本題と言ってもいい。これはまた特にウッドロウには黙っていてくれ、この事を知られればのらりくらりとかわしかねんからな』
「・・・えっと・・・その内容とは?」
それを受け礼を言いつつイクティノスは今度は二つ目だと言い出すが、一つ目と違い何かニュアンスが違うことにイオンは不思議そうに先を問う。



『・・・頼む、ウッドロウを結婚させるように仕向けてくれ』



「・・・は?」
・・・だが予想を遥かに超えるイクティノスの切実な頼み込みの声に、イオンは何事かを理解出来ずに呆けた声を上げた。








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