必然は偶然、偶然は必然 第十二話

「イオンもそうすることにした、いやそうしなきゃならないまでの事をあいつらはやってしまった。だから俺達はあいつらをあのタルタロスに乗せて行動してるんだよ」
「・・・そう、ですか・・・アリエッタもわかる、です。アニス達、絶対に許されない事した、です。だからイオン様の怒りも、ルークの怒りもわかる、です・・・」
「そっか」
自分もイオンも、焦点の当て方を変えイオンも含め自分達の総意だと言われアリエッタは暗くうつむくも納得した声を上げルークは一安心する。
「でも・・・やっとわかった気が、します」
「ん?」
しかし続いた声には前を向き力が少なからずこもっていたことに、ルークは首を傾げた。
「やっぱり今のイオン様は、アリエッタの知ってたイオン様じゃない、んですね・・・」
「あ・・・この数日でイオンと接してる内に、それを実感したのか?」
「・・・はい」
「・・・やっぱり辛かったか?」
「はい・・・でも知れてよかった、です」
そこから出てきたのはイオンが自分の知るイオンじゃないと理解をしきれたという声。たまらずルークが気遣った声を上げるが、アリエッタは反対に迷いを見せずに答える。
「アリエッタの知るイオン様も、今のイオン様も優しいのは、同じ・・・けどやっぱり心のどこかで、イオン様はアリエッタの知るイオン様じゃないかって、信じられないまま、過ごしていく内に、わかりました。本当にあのイオン様は、アリエッタの知るイオン様じゃないんだって・・・だからアリエッタ、考えた、です。アリエッタ、もうイオン様だけ見ていくのやめる、です」
「えっ・・・?・・・いいのか?」
「はい・・・いいです」
そして出た結論は今までのアリエッタには有り得ないはずのイオンを求める事をやめるという宣言。数日の間に出した結論を信じられないルークに、アリエッタは迷いを見せない。
「まだ謡将達の事どうするかは決められない、です。謡将達に会ってないから・・・けどイオン様の事も知ったからアリエッタ、イオン様の事もどうするか今のうちに決めた方がいいって思った、です」
「それでイオンを見るのをやめるって、決めたんだな・・・?」
「はい・・・アリエッタ、ずっと導師守護役に戻りたくて、前のようにイオン様の隣にいたいって思ってました。けど前のようになんて出来ないの、アリエッタこの数日でよくわかった、です・・・今のイオン様がイヤって言うんじゃない、です。でもこればかりは・・・」
「・・・姿形が同じでもやっぱり別人は別人、だから同じようには出来ないんだよな?」
「はい・・・だからアリエッタ色々考えて決めた、です。これからはもうイオン様ばかり見るんじゃなく、自分でちゃんと考えて、イオン様を困らせないようにしようって。それが今のイオン様にも、前のイオン様にも、アリエッタはちゃんとやれるんだって見せることが出来る、やり方だと思うから」
「・・・成程、そういうことか」
・・・拙く不器用ながらも、精一杯考えたのだろう。イオンの事実を知り自分はどうするか、それをシミュレートした上でのその声には確かな強い想いが込められていた。だからこそルークはその自立への願望も含まれていることを察し、フッと軽く笑いアリエッタに一歩近寄り眼前に立つ。









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