必然は偶然、偶然は必然 第十二話

『・・・私が必要とはどういうことだ?ハロルド』
「それは私も聞きたいところだな」
・・・廊下に出て自分にあてがわれた部屋に戻ろうとしたハロルドに、イクティノスとクラトスが共にすぐまさ疑問の声を向ける。
「んー、正確に言えば必要なのはローレライの協力なのよ」
「・・・何?」
『我の協力?』
「あらローレライ、聞いてたの?」
『あぁ』
だが必要なのはイクティノスではなくローレライ、そう言われクラトスが眉を寄せるとすぐさまローレライが声をかけてきた。
『だが話が見えんぞ、ハロルド。障気を取り除くなどどうやって・・・』
「理論上は可能よ。というより実績があるじゃない、聞いた話だと。確かティアの体内の障気を引き取ってイオンは死んだんでしょ、前は」
『あぁ・・・っ!・・・だがあれは第七音素で構成された体を持つレプリカが命を賭けてこそやれる事だ、まさかそなたはレプリカを使って・・・』
「違うわよ、私はあくまでも一歩手前の段階をアレンジしてやるつもりだし」
『一歩手前の段階・・・?』
そこから自身も分からないと戸惑うローレライにハロルドが前のイオンの死の場面を前置きとして出され、その意図に検討がついたローレライはたまらず非難めいた声を向けるがすぐさまハロルドは首を横に振り違うと示す。
「そうよ。フォミクリーって複写したい物の情報を元に第七音素を集めてその情報から本物そっくりのものを作る技術でしょ?それでイオンが医者すらも匙を投げるほどの重症だった体内の障気を引き受けることが出来たのは、それは第七音素と障気が引っ付きあいやすい性質を持っていたから出来たこと・・・だから考えたのよ。フォミクリーみたいに第七音素を集める事が出来る装置を作り、それを障気障害の人の体内から第七音素に反応して障気を抜き取れるようにしたらいいんじゃないかってね」
『何!?そんなことが、出来るのか!?』
「全然可能よ、むしろ余裕だわ」
疑問を晴らせない周りにハロルドはそれが出来るだろう理論を自信に満たせながら言うが、ローレライにとってその中身は衝撃以外の何物でもなく声を大きくしてしまった。
「こんなものこの世界に元々からあった技術を活かせば全然出来ることよ。でも障気障害はあまり一般向けに知られた病気じゃないようだし、そもそもフォミクリー技術も一般には禁忌の技術なんだからまず普通には結び付かないわね。けどそれを上手く使えさえすれば障気障害は治り得る病気に変わるわ、ちゃんとフォミクリー技術を応用すればね」
『・・・そうか・・・』
そこから無意識にか気を使ったように話をしたハロルドに、ローレライは噛み締めるように納得の声を上げる。
(・・・フォミクリー技術で障気障害を直せる、か。ハロルドは容易く言ってのけるが、こんなことを簡単に考えれるのはハロルドだからだろうな・・・)
そんなローレライの心中には口にこそ出さないが、そのフォミクリー技術はフォミクリー技術としてのみではなく使うという既成概念を壊す発想力はこの世界の誰にもないだろうと感嘆していた。
「それでだけどローレライ、ちょっとあんたに協力してもらいたいのよ」
『・・・うむ、何をすればいいのだ?』
だからこそローレライはさっさと話を進めるハロルドの話を信じることにした、障気障害を人為的に直せる事を。









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