必然は偶然、偶然は必然 第十一話

「辛いってのは俺にもよく分かる。けどよく聞いてほしい・・・アリエッタ、お前は今のイオンと昔のイオン。どっちも好きか?」
「っ・・・はい、好きです。どっちのイオン様も、優しいから、アリエッタ、好きです・・・」
「じゃあ、ヴァン謡将は?」
「・・・それは・・・」
ルークの心に触れ話を聞く心に変わったアリエッタ。そこで改めて心の中を確かめるようルークが問い掛ければ、ヴァンの名にはイオンのように戸惑い混じりでも好きだと言えず顔を背け言葉を濁す。
「・・・それでいいんだよ」
「・・・え?」
そんな姿を見て優しくその声を肯定するルークに、アリエッタはキョトンと目を瞬かせて首を正面に向けた。
「今はそれでいいんだ、自分の心がどうなってるのかを確かめれればな」
「確かめたからって、どうすれば・・・」
「また考えるんだ、もっと自分がどうしたいのかってな。そして考え抜いた後、後悔しないように行動するんだ・・・イオンは好きだと言えるけど、ヴァン謡将はどうとも言えない。それはお前の中での事実なんだろ、アリエッタ?」
「はい。でもだからって、どうしたらいいかが・・・」
「なら、俺達と一緒に来るか?」
「え・・・?」
・・・ルークの経験、アリエッタの迷い。会話の中身に想いが交錯する中、ルークは優しくアリエッタに手を伸ばす。
「迷っててどうするか、今すぐには決めれないんだろ?だからヴァン謡将と俺達が敵対するだろう時まで、俺達と一緒にいるんだ。そうすれば考える時間はいっぱいある」
「え・・・で、でもいいんですか?アリエッタがいて・・・」
「・・・このままアリエッタを放っておいたら流されるままになる、そう思ったからだよ」
「・・・え?」
その手に戸惑うアリエッタだったが、ルークはその戸惑いに儚げな笑みを浮かべ手を引っ込める。
「分かるんだよ。何も決められないまま、うまく自分の心の中を伝えることが出来ないまま周りに従ってたら後悔することになる・・・って事をな」
「・・・なんでそんな、こと・・・」
「じゃあアリエッタ、今の気持ちのまま他の六神将やヴァン謡将の所に行って周りに流されないって言えるか?シンクとかの厳しい言葉で今すぐイオンと容赦なく戦えって言われたら、迷わず出来るか?」
「っ!?・・・それは、出来ない、です」
「そう。でもアリエッタは否定出来ない、どうするかを決めきれてないから。だから周りが急かす決断に乗らざるを得なくなるんだ。言うことを聞かなかったら見捨てられるかもしれない・・・って思ってな」
「!!」



・・・見捨てられる、ティア達の意にそぐわなければ自分はそうなってしまう。ルークにはそういった強迫観念があった、事実そう言われてしまっただけに。そしてアリエッタに関しても言葉にはしなくともその可能性があるのは否定出来ないどころか、最悪裏切りだと殺されてしまう可能性すらある。



自身と相手の立場に立って真剣な上に否定の出来ないヴァン達の考えまでもを上げた話をしたルークに、アリエッタは直に理解をしてしまい驚愕の表情で何も言えず言葉を失った。
「・・・俺はそんなアリエッタと戦いたくないし、そもそもそんなじゃなくてもアリエッタと戦いたいとも思ってない。けど戦わなきゃならないってんなら俺達も負けるわけにはいかない・・・だけどそんなことしたくないからと言ってアリエッタにこっちにいろなんて命令出来ない。そんなことしたら不本意な事を強要することになるかもしれないからな・・・だからアリエッタにはしばらくこっちにいてどうするかを考えて欲しいんだ、どっちにしても自分で決めた結論の上で動いてもらうために」
そしてアリエッタの気持ちを尊重する考えをルークは柔い笑みを浮かべて言えば、そっと手を再び差し出す。



「だからさ、俺達と行かないか?」










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