必然は偶然、偶然は必然 第十一話

「・・・うぐっ、ひぐっ・・・イオン様が死んでたなんて、そんな・・・」
・・・そしてイオン達の耳に届いて来たのは袖で涙を拭いながら、すすり泣くアリエッタの声。
「・・・お前にその事実を伝えなかったのは、悪いとは思う。だがその事実をお前に伝えれば周りにその事実を悟られることもだが、お前自身が再起出来ない事も考えられた。だから言えなかったんだ」
「だから・・・?・・・だからって、そんなの今言われても、アリエッタ、辛いだけ、です・・・それなのに何で今言った、ですか・・・!?」
「・・・それは遠くない未来、僕らとヴァン達が戦う事になるからです」
「えっ・・・!?」
そのアリエッタにリグレットが謝罪しながらも声をかければ、アリエッタは辛そうに涙を浮かべ精一杯責めるような声と目を向けるが、イオンのヴァンと戦うという言葉に悲しみから驚きに揺れ動く。
「僕達はヴァンのやろうとしていることには賛同できませんが、かと言ってヴァンを説得などということは彼の性格もあって無理だと僕達は見ています。そうなれば僕達は貴女と戦うことも有り得る上、最悪何も知らないままに貴女はヴァンの言うがままに今の世界を滅ぼす手伝いをしかねません・・・だから貴女に選んでいただくためにも、そしてせめてどちらが負けた場合でも事実を知っていただくためにもと思ったんです。この事は今の内に知らせておくために・・・」
「・・・負けた場合って、どういうことですか?」
「もしその戦いでヴァンが勝ったなら彼は貴女に真実など何も明かすことなく、闇に葬ることでしょう。そうなれば貴女は事実を知ることもなかったはずで、僕ももうその時にはこの世には存在していないでしょう」
「っ・・・!」
「そうなってからでは、手遅れなんです」
更に戦いを引くつもりなどないと言いつつも今言わなければならなかったと強くイオンが言いきれば、アリエッタは涙を浮かべながらも言葉を失う。そんな様子にイオンは断腸の表情を浮かべながら口を開く、アリエッタがこちらに牙を向けないで欲しいと願い。
「・・・この事を今まで話さなかった事に関しては僕にも責任があります。いかにダアトを乱さない為とはいえです。ですがこれからは遠からず僕達とヴァン達による激しい戦いになります。それは避けられません・・・だから貴女自身の意志で決めてほしいんです、これからどうするかを」
「これから・・・?」
「流されるままに全てを享受していくのではなく、自分で考えて欲しいんです。全てを知った、その上でこれから起こる戦いでどうしたいのかを・・・」
「・・・っ!・・・それを、考えるように言ってる、ですね・・・」
「はい・・・」



・・・アリエッタの行動の根本には『導師イオン』と『ヴァン謡将』という存在に対しての恩義がある、それは自身を救ってくれたことがあるからだ。だがそれを取り除かねばアリエッタはこれから未来永劫二人の影を見なければ動くことが出来ないことになる、自分の意志を二人に委ねる事をまずと思っては自我は芽生えないのだ。だからこそある意味では神聖な存在とアリエッタなら言える二人を除外させなければ、アリエッタは先に進めない。



あえて自分達の味方をするよう言わずに自分で決めるように言ったイオンに、アリエッタも逃げは許されないのだと理解し暗くうなだれる。
「「「「・・・」」」」
その様子をイオン達は固唾を飲んで見守る、けしてその考える時間を邪魔しないよう静かに・・・






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