必然は偶然、偶然は必然 第十話

・・・ティアと初めて会った時、初めリグレットはその姿形もあって子供そのものだと思っていた。その時はヴァンの命令が仕方無しとは言え下されたのもあり、リグレットも内心ではその指導の時間を少し面倒と思っていたのは否定出来なかった。

だがそれから自分の指導を自分勝手に抜け出したりされたりしたものの、時が経つにつれて教官と生徒という関係を確かに築いたとリグレットは思っていた。いや、実際に自分を慕うその姿勢はそれで正解だと言えると今でもリグレットは言える・・・だがそれ以外の事に関しては何も関わらなかった、だからティアはそれ以外で致命的に欠陥があると知らなかったのだと改めて感じていた・・・今こうやってルーク達と繋がって気付いたからこそである。

・・・神託の盾の人間としての心構え、戦闘技術の向上。そんな軍に必要な事はよく覚えていった。だがそれはあくまでも神託の盾及びダアト内だけにおいて通用すること、それ以外の事も必要になる国外においてはそれだけの事では通じない。だがティアならと思っていたのは身内びいきなのだと気付いた、いや気付かされた。以前の敵だった時なら表面上のやり取りだけだったために気付かなかったのだろうが、今度はティアの行動をルーク達から深く聞かされてそれを否定出来ないティアを見てしまっただけに。

・・・その時リグレットの中には自身の教えが甘かったという情けない気持ちと共に、それでもルークにはイオンと同様の礼儀を尽くす流用が効くだろうとそれすらもわからなかったのかという憤りも浮かんだ。二つの相反する思い・・・これはリグレットの中ではどちらも否定出来なかった。だがこうやって現実を見て新たな道を進むと決めた今、リグレットはティアの事も決めなければならないと感じていた。教官として再びルーク達から批難を浴びようと教鞭を取りティアを更正させるか、もうティアを見捨てるかと。

そしてリグレットが選んだのは自分が死んだ後世界をめちゃくちゃにし、ルークの言葉は頭ごなしに否定しても構わないという姿勢を崩さなかったティアを切り捨てる事だった。

・・・その時リグレットの心の中からは既にヴァンの手を離してウッドロウと歩むことを選んでいたのもあり、ティアのあまりの愚かしさにグランツ兄妹共々いっそ元々からの繋がりがないかのよう情けは霧散して消えていた。












・・・そんな内心を少なからず汲み取ったイオンは、リグレットから視線を外して周りを振り返る。
「・・・さて皆さん、とりあえずはアクゼリュスの皆さんを救助するまでタルタロスはこの場に固定されます。本当ならまた救助活動に赴きたい所ですが、少し休憩を挟みましょう。僕達も微々たる物とは言え、救助活動をしていましたからね・・・なので住民の皆さんの部屋を取る形で申し訳ありませんが、空いてる部屋を使わせてもらってもいいですか?」
「あ、はい。今なら救助活動を始めたばかりですので使える部屋はまだあると思いますが、一応確認をとってまいります」
「お願いします」
そこから休憩をすると言い入口にいる兵士に部屋を使わせてほしいと言えば、兵士は状況を正確に把握した意見を出した上で確認を取ると言いイオンも納得した上でその兵士にお願いし送り出す。



・・・本来ならルーク達に休息はまだ必要ない、なら何故休憩を申し出たのか?・・・イオンはその答えに真剣に視線を送る、アリエッタという答えに。










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