必然は偶然、偶然は必然 第十話

「まぁ俺もリグレットから話を聞いて色々考えていく内にナタリアの事も引っ掛かってたんだよ。まぁ俺がナタリアと何の問題もなく結婚なんて事になりゃ別に大したことじゃないんだけど、お前それは嫌なんだろ?」
「っ、当たり前だろうが!」
(心配しなくても俺から辞退するよ、ナタリアの伴侶なんて・・・おっと、もう王女どころかナタリアであるかどうかすら今の時点じゃ定かじゃねぇんだ)
未だプルプルしているその姿に自分じゃダメなんだろうと言えばアッシュは動揺しながらも怒声で返し、ルークは心中ではもうナタリア自体が王女の立場から転げ落ちているだろうなと思いながらもアッシュを片付ける為にけしてそれは口にせず、怒声に対応する。
「じゃあお前、誰がナタリアの相手なら納得するんだよ?」
「っ・・・それは・・・・・・くっ、俺は俺以外にナタリアを認める気はねぇ!俺はナタリアと約束をした、テメェとは交わしてない約束をな!テメェは一番有り得ねぇが、他の誰とも知れねぇ馬の骨に任せたくもねぇ!だからナタリアとは俺が結ばれる!」
「「「「・・・」」」」
なら納得出来る答えを言ってみろと突き付ければ、納得出来る答えを出すのにアッシュはためらっていたが沸点を吹っ切ったのとナタリアの事を諦めたくはなかったのだろう。恥など一切感じてる様子もなく自分が結ばれると大声で言いきったアッシュに、ルーク達一同の視線が『何言ってるの、こいつ?』という冷ややかでいて明らかに引いた物へと変わっている。ティアとアニスはキョトンとしてるだけだが、ガイにジェイドまでもだ。



・・・流石にルーク達も愛の告白を堂々とナタリアがいないところでやるとは思っていなかったのだが、それはそれで都合がいいかと思いルークは引いたまま口にする・・・それがどれだけ愚かしい発言で、実行不可能な事かを。



「・・・あのさぁ、お前ナタリアと結婚するとか言ってるけどどの立場で言ってる訳?」
「・・・何?」
「いや、だってお前『アッシュ』な訳じゃん。それでダアトに神託の盾から追い出された訳じゃん。そんなスッカラカンな立場でどうやって結婚する気だ?まさかお前、散々マルクトの民の命を奪った師匠率いる神託の盾に所属しておきながら都合が悪くなったらキムラスカに戻りゃいいなんて思ってる訳じゃねーよな?普通に考えてみろ、そんな自国と関係無いとこで活躍して別の国に被害を与えていたヤツをキムラスカが諸手を上げて歓迎すると思うか?しかもその事実を被害を与えられたマルクトは知ってるんだぜ?そんなヤツを次期女王にあてがわせて王にするなんて有り得ると思うか、オイ?」
「・・・っ!」
呆れ果てた口調からルークはどれだけ身分貧乏で取った行動からまずい立場にいるのか、はっきりと説明された上で感情だけで否定出来ない問いかけにアッシュの顔面が強張り冷や汗がダラダラと出ている。



・・・そもそもアッシュの行動はヴァン達の起こした行動がでかかった事もあり、その対比と大きさに隠れた事でうやむやにされた点は否めなかった。しかしそれを王になる前、もっと言うならアクゼリュスが崩落したころにちゃんとした形で白日の元に晒せば罪人にしかなり得ない物であるとルーク達は思っている。

だからこそ本物であるとか偽物であるとか関係無い次元で自身の罪で押し潰させる、ルークはそう思いながらとどめに繋がるよう更に追い込みをかける。








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