必然は偶然、偶然は必然 第十話

「という訳ですからね。誰の味方でもないと貴方はおっしゃった、それは裏を返せば誰が敵にでもなりえる状況を自ら作られているのです・・・だからこうやって捕らえてしまわれても、文句の言えない立場にいるんですよ。貴方は」
「・・・っ!」
「ただもうどこの所属でもない貴方などに一々罪がないなどと言われ続けるのももう面倒です。貴方の身柄はマルクトに引き渡して処分もマルクトに一任してもうここで話を終わらせます、アッシュを裁く権利はマルクトにあるんですからね・・・ではもう貴方に僕から話すことはありません。セネルさん、アッシュをそちらの兵士の方に引き渡して下さい。それで「待てっ、導師っ!」・・・なんですか、アッシュ?」
それをさっさと引き出すため有無を言わさず場を収束させる流れを作っていくイオンに、アッシュは顔をひきつらせセネルの名を呼んだ辺りでもうまずいと思ったのか体を揺らし声を大きく張り上げどうにか流れを止める。
「・・・俺はその屑と違ってここで終わるわけにはいかねぇ、だからさっさと離しやがれ」
「話を聞いてなかったんですか?貴方を離す理由なんてこちらにはないんですよ、どうしてもと言うのなら納得出来る理由を話してください」
「いいだろう、話してやる・・・」
アッシュはそのまま横柄な声で離せと言うがイオンは意味がないなら一蹴すると暗に示した前置きをすれば、一転不敵な笑みを最大限に浮かべルークを見上げる。そのルークの顔は何か反応するでもなく、ただ平然とした物。
「・・・おい屑。テメェと俺の顔、なんで似てると思う?」
「俺が偽者って言いてぇんだろ?知ってるよ」
「・・・は・・・?」
そして自信満々に語る・・・はずだったアッシュの前置きの質問にルークは平然な顔そのままに自分が‘ルーク・フォン・ファブレ’の偽者と知っているとあっさり言いきった。その答えにアッシュばかりか、周りのティア達までもがポカンとする。
「お前、忘れてねぇか?俺がパッセージリングの制御盤で師匠と相対してたことを。あんな状況に俺が出来たのって・・・俺がリグレットから事実を聞いてたからなんだぞ」
「なっ・・・何!?」
「・・・あぁ・・・」
そんな空気の中でその事を知っているのはリグレットのおかげと視線を向けて言えばアッシュは驚愕の声を上げ、ルークが他に気付かれないよう一瞬だけウィンクをして視線を背ければリグレットは周りに聞こえない程度に静かだが確かに納得したような声を上げる。



・・・ルークがリグレットから真実を聞いたという事、それははっきりと言えば嘘だ。ならば何故そう言った上でリグレットに目配せをしたのかと言えば、口裏を合わせボロを出さない為に自分達で事を片付けるためである。

元々来るはずだった未来から来て全て知っているから理解しているんだ・・・などと言うつもりは更々ルーク達にはない。ティア達を味方にする気など最初からない上、話を信じる可能性の方が低いと思っているからだ。よしんばその話を信じたとしても後々自分達が引き起こすであろう世界規模の混乱など、ティア達が信じる可能性はそれこそ絶無に等しい。あんな状態にしてまで自分達の非を認めなかった連中に、見下しているルークからそんな愚行を言われても確実に受け入れるはずがないからだ。

・・・そういった考えがあったから何も言わずつじつまを合わせつつ自然な流れを壊さないようリグレットに合図をしたわけだが、その辺りを理解してくれた事はルーク達にとって幸いだった。









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