必然は偶然、偶然は必然 第十話

「貴方は度々ルークを襲ってきましたし、僕のやめろと言う声を聞かないとも言いました。これが誰かの差し金と言うのであればまだ貴方にも酌量の余地はあるのですが、個人の意志だとはっきり認めました。これは到底許されません、神託の盾としてもですが人としてもです・・・わかりますか?僕の言葉を無視してまでただ貴方はルークを殺そうとしたのは、教団のトップに対する背信であり神託の盾への背信なんですよ。キムラスカの要人であるルークを守る為に発言をしている僕に刃向かっているんですからね」
「ぐっ・・・!」
「何ですか?喧嘩を一方的に売ったのは貴方でしょう、アッシュ」
「何を言ってやがる!前にタルタロスを襲った時、この屑はいきなり俺に攻撃をしかけやがったんだ!それが一方的にと言うんなら何になる!」
「タルタロス・・・へぇ、貴方がそれを言いますかアッシュ?・・・このタルタロスを取り戻したのがどの軍か、お忘れですか?」
「・・・っ・・・!」
その上で話を戻し丁寧に非を語るイオンに悔しそうに顔を歪めたアッシュだったが、その反応を見て喧嘩を売ったのはそっちだろうと言われルークの非にだけは敏感なアッシュはすぐさま激昂し蹴られた時をイオンを見上げながら蒸し返し反論する・・・が、それこそイオンの待っていた馬鹿な答えだった。タルタロスと軍と口にしながら冷笑を浮かべたイオンに、アッシュは次第に事態に気付き驚愕に目を見開いた。
「・・・貴方が気付いたかどうかは知りませんが、このタルタロスは元々マルクトが所有しているものです。そんなタルタロスを貴方は襲いました、それもタルタロスにいた人達を皆殺しにする形でです。そんなことをしておいて貴方は何の咎もなく済むとお思いですか?」
「っ・・・それは、それを言い出したらここにいるリグレットにアリエッタはどうなる!?そいつらも俺と一緒にタルタロスを襲っただろうが!」
「「・・・っ」」
そんな顔になったアッシュに周りにマルクトの兵士がいる中静かに行った行動を不利にしかならないよう上げていけば、反論につまったのか矢面に上げたのはあろうことかリグレットとアリエッタも同罪だろうと言う他者を巻き込む物。その逃避と自分だけが悪いんじゃないと言い切る声に、リグレットとアリエッタの顔が共に不快感と怒りを帯びた物に染まってアッシュを見下ろした。
「何ですか?言っておきますが、彼女達は貴方と違ってヴァン達と手を切った上で僕達に付いてくれる事を選んだ・・・それは即ち僕の庇護下に入ることを意味します。ただ貴方はヴァンの味方でも僕達の味方でもなく自分は自分、と言いました。まぁヴァンの庇護下にいても貴方は敵と言うことになるから言い訳など許されない立場な訳ですが、自分は自分などと言ったのですから尚更誰も貴方を助ける意味などありません。だって貴方はもう神託の盾の一員などではないのですからね」
「・・・っ!」
そんな二人の表情に気付きながらイオンは二人との立場の違い、協力関係にあるかどうかを上げつつもお前など擁護しないと言い放ちアッシュは愕然とした。察するにイオンならどんな悪いことをした身内でも確実に守るとでも思っていたのだろうが、あまりにも現実的かつ冷酷な判断を信じられないのだろう。



・・・ここまで来ればアッシュに残った反撃方法など、精々後1つ程度。そしてその1つもとうに検討などついている。

最後に残ったアッシュにとって唯一無二の脱出口を自ら開かせてから叩き潰すべく、イオンは更に口を開く。









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