必然は偶然、偶然は必然 第十話

「屁理屈ですか?なら貴方は今もローレライ教団に忠誠を誓っていると、胸を張って言えますか?」
「・・・それは・・・」
「ほら、言えないでしょう。それでここではあえてルークを狙っていた訳など聞きたくもないし言わせる気もないのですが、貴方は僕からもうルークを襲うななんて言われたって聞く気なんてないでしょう?」
「それこそ聞かれるまでもねぇ、なんで俺がこの屑に遠慮しなきゃなんねぇんだ!」
「そう言うと思ってたから僕は神託の盾から貴方を除名すると言ったんです」
「何・・・!?」
信心、そして復讐心。初めは流石に導師に堂々と忠誠心が無いとは言えず歯切れが悪そうに答えるが、ルークの事に関しては即答の罵倒付きで答える。だがそんな答えを予測しているイオンの返答に、アッシュの顔が驚愕で歪む。
「僕はローレライ教団の導師として、ダアトのトップとしての責務を果たす義務があります。そしてその責務の中には教団及びダアトを守る事も入っています。ですが貴方の取るだろう行動を聞けば聞くほど、そんな想いとは真逆な物だと感じました・・・考えても見てください。もしダアトの神託の盾の兵士がキムラスカの貴族を襲ったと知れたなら、普通に考えて国際問題になるとは思いませんか?」
「・・・まぁ普通に考えりゃそうなるだろうな。だがその屑が死んだところで何になる!誰もそいつが死んだところで問題になんかしねぇよ!」
「っ・・・セネルさん、黙らせてください」
「・・・っ!」
‘ガンッ!’
「ガッ・・・!」
それで確かな理屈を語るイオンに納得するかと思われていたアッシュだったが、ルークだからそんな丁重な扱いになるわけないとまた懲りずに罵倒する。だが流石に懲りずにただルークを罵倒する様子にイオンは青筋を軽く浮かべ、あくまで冷静な声色で捕縛していたセネルに黙らせるよう頼む。その声にセネルもイラついていたのかためらいなく足を払って首に腕を押し付け、地面に倒す。たまらず痛みに声を上げるアッシュだが、セネルに体を押さえられているその姿を見下ろすイオンの目には一切情けなどない。
「・・・貴方、話を素直に聞く気はあるんですか?さっきからルークを屑と言うばかりで僕の話をまともに受け入れる気などないとしか思えませんが、もしそうでしたら今すぐ話を打ち切ってクラトスさんに首をはねていただいて構わないんですよ?」
「・・・っ・・・!」
そしてその目のまま純然とした殺気をイオンが放てば、アッシュは上を見上げながら冷や汗をかきながら押し黙る。それが単なる脅しではないとくらいはわかったのだろう、緊迫した様子を浮かべるその姿には一切余裕は見えない。そしてイオンの殺気に驚きおののいたのはティア達も同様のようで、信じられない物を見る目となっている。



・・・ルークに全てを押し付け、何もかもが悪いと決めつけるその姿は今のイオンにとって非常に許しがたい物であった。それで話が進まないのもあって我慢がきかなかったからセネルに黙らせてもらったのだが、ウッドロウ達がいなかったらイオンは自身が思いきりアッシュをぶん殴っていただろうと思っていた。
「・・・さて、話を戻しましょう」
そんな怒りを少しだが納めつつも、イオンはまた何か余計な事を言えば今度は殺していいかと思いながら話を改めて進め出す。









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