必然は偶然、偶然は必然 第十話

「こう言った場合余程でなければ相手方は失礼とは言わないものです。多少程度ならまだ国交の事を気にして相手方も遠慮してそうそう言えませんからね」
・・・これが身内内での事であれば直接的にでも間接的にでも本人に言えようが、余程失礼とハッキリわからなければ国をまたいでの文句などリスキーとしか言えない。それこそ下手に言えば外交問題に発展するだけに。だが今はアニスを排斥するために二人はいる、そんなこと関係はない。
「ただルークからそう言った態度があまりにも目に余るといった声がかかり、あまり改めるような態度にならないどころかティア達と一緒になって責めるようなことすら言ってましたからね。それで僕もこれでは、と思いましたからこのようなことをした・・・と言う訳ですよ」
「・・・そ、そんなぁ・・・」
「・・・それでこれはティアにも言っておきますが、今の位置に貴女達は平穏無事にいれるとは思わない方がいいですよ」
「「・・・え?」」
ルークとイオン、二人の意がまとまっているからこそ出来る愚行の断罪。そのアニスにとってあまりの中身にアニスは愕然とするが、まだ先があると告げる声にティアも引き合いに出され二人は共に嫌な予感を感じたようで恐々とした瞳を向ける。
「貴女達は所属は違えど大元を占める上司はモースですよね?それでティアだけに関して言えばモースの口利きがあるから親善大使一行に加われた訳ですが、それは言ってみればモースの独断の上での事で僕にダアトの総意の上での事とは到底言えません。だから貴女達はダアトに戻ったときは覚悟してもらいますよ、僕も交えモースがいない上での上層部がどう言った判断を下すかをね」
「「!」」
・・・そしてイオンは大したことないように当然の事と言い放った、二人には自分が用意する断罪の場があることを。だがそんなことを素直に聞けるはずのない二人の目が大きく泳ぐが、イオンは余計な言い訳を許さずすかさず口を挟む。
「尚、言っておきますがこれまでの貴女達の態度は既にダアトに報告済みです。責任逃れなど出来ませんよ」
「えっ!?」
「そ、それはいつ・・・!?」
「ここに来る前のケセドニアですよ。ありのままにお伝えしていますので、公平な審査は皆さんしていただけると思いますよ?少なくともモースみたいに自分の意見のみで貴女達を判断しないでしょうね」
「「・・・!」」
そのままダアトに報告済みと宣えば二人の顔色がみるみる内に青ざめていく。察するにモース以外の人間がモースと同じように自分を必要としてくれる、などとはないと考えているのだろう。
「イオン様・・・」
だがその今までのイオンにない苛烈さに隠そうとはしているものの、ひっそりキツそうに声を向けている者がいた・・・それは、アリエッタだ。
(まぁアリエッタからすりゃ複雑だよな。イオンがこんな風に身内を切るなんて判断を出せるだなんて思ってないだろうけど、アニスに対して導師守護役を降ろされた悔しさもあるし言ってることも間違っちゃいないとは思ってるだろうしな)
そんな人形で口元辺りを隠す動作も含め、アリエッタの内情をルークは推察する。
(・・・イオンの件についちゃ後でちゃんと話すから、それまでは何も言わねーぞアリエッタ。まだやることは残ってるしな)
だが今はまだその詳しい敬意は言えない、そう思いながらルークはチラッと気付かれない程度に見る。そこにある、アッシュの姿を・・・











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