必然は偶然、偶然は必然 第十話

「ま、これについちゃ俺が言うのもなんだけどな。お前、イオンの元を度々離れてたろ?導師守護役のくせして」
「それは、イオン様が一人にしてくれって言ったからであってぇ~・・・」
「あれ?そう言った場合って部屋にこもりたいとかだったら扉の前に立ったり、どこか歩く場合だったりしたら少し距離を空けて付いてくるもんじゃねぇのか?せめて付かず離れずってくらいで、護衛対象を守るためにな。実例を上げるなら前にタルタロスが神託の盾に襲われた時あったのに、お前あん時イオン守るどころか脱出するまで一切姿見かけなかったけど・・・あれってもしイオンが自分の手に負えないような事態に陥ってたら、それは自分の責任って思わなかったのか?」
「・・・そ、それはぁ・・・!」
まずはと護衛役としての不徳、その上でタルタロスでの行動をあわせて不手際をルークが説明すればアニスの口がすぐさま動揺で止まる。



・・・タルタロスでの件だけでなくアニスは以前から護衛という物を履き違えている事をルーク達は知っている。以前はアニスの立場を鑑みてティア達と共に同情をするに留まっていた訳だが、そもそも後ろめたい行動をしていたのは紛れもない事実なのだ。

それを一連の流れのドサクサで無いことにしたばかりか、英雄という肩書きにあぐらをかきそれらの態度を改めようともしなかった。その結果がダアトに争乱をもたらしたのだ、イオンと一緒にいた時のような気安さを持ってティアと共に政治に介入したため・・・



「あれはクラトス達がいたからイオンはなんとか無事にいれたけど・・・普通に考えたら護衛の役職放棄って見られてもおかしくないっつーか、むしろそう見られて当然なんだぜ?」
「そんな・・・イオン様、イオン様はそれであたしを・・・?」
「まぁ理由の1つではありますね」
「えっ・・・1つ・・・!?」
・・・だからこそアニスは英雄としては扱わせられない、ましてやその境遇から救いだし導師守護役として使い続けるつもりなと毛頭ない。



ルークから罪状と言えるような話の中身を受けブルブルと震えアニスはイオンをすがるような目で見るが、まだあると冷静極まりない瞳で言われ目を大きく見開く。
「2つ目の理由を上げるなら貴女が露骨にルークに媚びたからです」
「・・・え・・・?」
恐らくアニスはスパイの件かと思っていたのだろう。イオンから口にされた意外な理由にアニスはキョトンとするが、十分理由になりえる事を正直にイオンは口にしている。
「貴女、自分の態度を思い返して媚びてるって分からないようにルークに媚びたとお思いですか?」
「・・・えっと、それは・・・」
「ハッキリと否定しない時点で自白しているようなものですよ、貴女の愚行を自分自身でね」
「え・・・?」
それで行動を思い返せと言えばアニス自身もこの状況がありふざけて返せないと考える様子を見せれば、イオンはすかさず切り込みだから責があると言う。
「本来他国の偉い人と交流する場合態度を律して接するのが基本で、卑しい態度を見せるなど持ってのほかです。そんな態度は自国なら相手方に失礼になりますし、他国の方からすれば怒りを買う原因になります。わかりますか?外交と言うのは本来非常に繊細な物です、失敗1つで国交関係が壊れてしまうくらいに・・・それでハッキリ申し上げるなら、貴女はルークの不興を買ったんですよ。あからさまなその媚び方に機嫌を損ねる事でね」
「!」
そしてそのままにイオンは宣告した、媚びるという事がどれだけまずく愚かな事かの結果を。









13/25ページ
スキ