必然は偶然、偶然は必然 第十話

(・・・この様子では僕達に対しての敬意の線引きを誤ったとは思ってはいても、心から反省はしていないでしょうね。そう思える原因の一端は間違いなくピオニー陛下にありますね)
・・・イオンは思う、そこにあるのは自分のいたらなさに対しての反省などではない。ただ反省しているフリをしているだけ、そう出来るのはピオニーの存在があるからだと。



・・・かつての未来にてジェイドはガイとは違い表立って同調はしなかったものの、遠回しな言い方でピオニーにティア達との同調を口にしてきた。だが元々ジェイドを信頼してきて情もあったピオニーはその声にはっきり否定の答えを返せず、表の立場を持って難民に食糧問題に対する対処を命じて自らと距離を離すようにして対処をした。

だが結局臭い物にフタをして遠くにやっても大元が変わらねば臭い物は臭いまま、むしろジェイドの考え方が変わらないまま進んでいく内にジェイドはゆっくりと自身の考えが正しいのだと周りの人間の思考に侵食するよう言い続けていった。

これがまだガイのような直線的で愚かと言えるような事ばかり言っていたら信頼など得られなかっただろうが、なまじジェイドは現実的な観点から見て具体案を出しなおかつ得意の批判をしていないとも取れるような微妙な口調で話す物だから次第に周りの人間は取り込まれていった。

・・・ただいくらジェイドの案は多少マシとは言え所詮世界の混乱という火の中に自ら飛び込むような物で、それは精々バケツ一杯の水を体に浴びる程度の気休めの物。そう理解出来たのはルーク達もであるがピオニーもで、ピオニーはそんな声に頭を悩ませつつも採用はしないとはねのけていった。その度々にジェイドは飄々としたポーズを崩さずにいたものの、影ではピオニーの判断をまた微妙な言葉で批判していた。ピオニーは絶対に自分を本気で罰したりしないという、信頼にも似た甘えの元で・・・



(・・・今のうちに自分は大丈夫とでも思っておきなさい。僕がこれ以上何もしてない、と思っていたら大間違いですよ)
・・・ジェイドに限って言うなら下手に攻撃をしても精神的なダメージを受けてない可能性が高い、ならばこそ目指すべき所は完膚なきまでに叩き潰す事。それにはある事が不可欠になってくる。



だが既に手を打っているイオンはとりあえずはこれくらいでもう終わらせるかと思いながら、口を開く。
「・・・そういう訳ですので、貴方はこのままグランコクマから来られる方々を待っていてください。あくまでこの状況はマクガヴァン元帥に判断を委ねた物ですので、ご不満であればどうぞそちらで申し開きをお願いします」
「・・・はい・・・」
そこで申し開きは別にやれと言えば、ジェイドは神妙に受け止めたというように答えるがそれが肯定だったことにイオンは見逃さなかった。
「・・・さて、続いてだけどアニスだな」
「っ!・・・どうして、アニスちゃんが捕まらなきゃいけないんですかぁ~?ルーク様ぁ・・・」
その光景を見た後続いてのターゲットをアッシュではなくアニスに定めてルークが視線を向ければ、媚びつつも怯えと敵対心を同時に浮かべながらアニスはひきつった笑みを浮かべる。










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