必然は偶然、偶然は必然 第十話

「もう1つ要因を上げましょう。とは言ってもこれは貴方だけではなくティア達にも当てはまるんですけどね」
「・・・それは?」
「僕の意見なら、と鵜呑みにし過ぎた事です」
「・・・?」
「・・・ふぅ、その様子では心当たりはないようですね。いいでしょう、説明します」
その上で信用出来ない理由を明かすが、ジェイドは全く予想だにしてなかったと首を傾げるだけ。イオンは仕方なく溜め息を吐き、説明を開始する。
「いいですか?エンゲーブからこのアクゼリュスに来るまでの間、貴方はルークが単体で出した意見を素直に受け止めた事はありましたか?」
「それは・・・いえ・・・」
「でしょうね。貴方も含めてティア達は理由もなくルークの意見を否定してきた、けれどその意見を僕が擁護もしくは代理で発すれば貴方達はすぐさま頷いた。これは言ってみればれっきとした差別です」
「「「!」」」
「・・・差別とは、そんなこと・・・」
「してないなどとは言わせませんよ、それに大きな目で見ればそれは国に繋がる問題でもあります」
「・・・っ!」
初めは事実だっただけに苦く頷いていたジェイドだったが、差別と言われティアとガイとアニスが固まる中言いがかりだと言いかける・・・が、事はそんな次元ではないと言うイオンに阻まれた。
「今のルークの立場はキムラスカの親善大使という身分で、そんな人物相手に貴方達は気を遣うこともなく意見を聞こうとしてきませんでした。それは先程ルークに対し配慮が欠けていると言った物ではありますが、ここにルークの言葉を借りた僕の意見だけを重用するその姿勢・・・言ってみれば貴方はその態度で白状しているような物です。ダアトには失礼を働く気はないがキムラスカには失礼を働いても構わないとね」
「!・・・私は、そのような気は・・・」
「そんな気がないとかあるとかの問題ではありません。ルークに僕が現にそう感じているのが大きな証拠です・・・それでも否定したいというなら聞きますが、今までの一連の流れで貴方はキムラスカから代表として派遣されたルークに好意的に見られているとお思いですか?」
「!・・・そうは、思えません・・・」
・・・ルークへの配慮がない、そう先に理解させたことがここに活きた。どう見てもイオンの言葉を否定できない状況に陥ったジェイドは最早表情を作れず、険を浮かべながら視線を背けてしまった。
「そう・・・僕は優遇しているのにルークは優遇しない。それこそがキムラスカとダアトの優劣を貴方がつけていることの他ならない証拠になりません。最もティアとアニスのジェイドに敬語を使っていた態度からすればキムラスカよりマルクト、などと思っていたのでしょうが・・・まぁ今はいいでしょう」
「「・・・!」」
そこで続けた声にティアとアニスの不義を後で責めると言うかのよう付け加えれば、二人はまた怯えたように身をすくませる。
「僕はあくまでもキムラスカとの和平を望んでいる、とあったから仲介役を引き受けたのです。ですが貴方の態度は何ですか?信頼を勝ち取ろうとしない、自分が優位なのだと勝手にルークをその意見の声も含め軽んじてきた・・・僕はそう言った明らかな差別心を見たからこそ、元帥に伝えたのです。貴方のその姿の事も」
「・・・それは明らかに国を見る目に偏重がある、許しがたい事だ。そう思ったからマクガヴァン元帥はこうやって私を捕縛することを選んだ、というのですね?」
「・・・そうでしょうね。ただ言っておきますがその判断はあくまでマクガヴァン元帥が下した物、僕はその判断材料を提供しただけの事てす」
「・・・そうですか」
そこからまたジェイドに声を向け不信の経緯をそう元帥に伝えたと言えば、ジェイドは一人妙に納得したようにうつむく・・・が、それはポーズの可能性の方が高い。そうイオン達は見ていた。








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