必然は偶然、偶然は必然 第十話

「なら今日限りでお前はクビだ。ファブレには後にでも経緯を記した手紙を送ってやる・・・ただこのままイオンに無礼を働いたお前を見過ごすのはいただけねーからな。しばらくの拘束は覚悟してもらうぜ」
「っ・・・はい・・・」
一通りガイにこの場で言うべき事は言った。そう思いながらもルークはしっかりと逃さないと釘を刺せば、反論の余地がないとガイはうなだれて返答を返すばかり。
「・・・さて、と・・・なんだ?随分と何か言いたそうだな、大佐さん?」
「・・・っ!」
そして次にルークが強制ターゲットに選んだのは静かに反感の目を浮かばせていたジェイドだが、当の本人は上手く隠していたはずの動作を当てられてかビクッと体を揺らす。
「・・・貴方、いえイオン様もですか・・・何故私に何も言わずにこのようなことを?」
「決まってんじゃん、お前に一切信用がなかったからだよ。それでその理由をありのままマルクト、まぁ正確に言えばセントビナーのマクガヴァン元帥に伝えたらこの有り様ってな」
「ジェイド、貴方これは不服だとでも思っていますよね?」
「それは、こんなことをされれば普通はそう思いますよ・・・ただそれを正直に全てを受け止めろなど、それこそ普通には出来ませんよ」
そこから仕方なしに話を切り出すジェイドだが、自身の行動には非はないと暗に示す答えにイオンが更に口を開く。
「ならばジェイド、貴方はマルクト皇帝ですか?」
「は・・・?・・・いえ、私はピオニー陛下から自身の名代だと賜ってはいますが皇帝ではありません」
「そうですよね?ならば位の高い軍人と貴族、どちらが地位が高いかはお分かりですか?」
「それは貴族でしょう」
「結構・・・これはティアにも通じる事ですが、貴方にはルークと言う貴族に対する配慮。これが欠けていた事が1つの要因です」
「1つの・・・?」
質問、そして段階を置いた上で言う話し方。イオンのその口振りにジェイドはどう言った展開になるのか読めない為か、反論せずに首を傾げるばかり。
「まぁ言葉遣い自体はティアと違い貴方なら上手く言い逃れが出来る範囲の事ですのですが、配慮が足りないと言ったのは貴方が心からルークの信頼関係を作る気が毛頭無かったことですよ・・・あのチーグルの森からね」
「っ・・・あれ、は・・・!」
「どうですか?貴方、あの時にルークを貴族として扱いましたか?」
「いえ、それは・・・」
そこにチーグルの森を出てからのタルタロスが襲われる前の一件を投じれば、流石にジェイドもルーク達に凹まされた時の事を掘り返された過去を否定など出来ずに曖昧に首を横に振るばかり。(ちなみにティアもチクッとついでに攻撃したため、ティアも苦々しく何も言えない表情になっていた)
「そういった事をあのタルタロス以降で一時的にしか改めなかった事、それが1つの要因です・・・当然と言えば当然でしょう、ルーク自身その事を言いましたし僕もその事を注意しましたからね。言われたことを全く活かせない人に、何故信頼がおけましょう?」
「・・・確かにそれなら私に信頼が置けない、と言うのはわかります。ですが要因の1つ、と言う事はまだおありなのですか?私に言うべき事は・・・?」
「えぇ、当然」
「っ・・・!」
・・・否応なしにでも話を受け入れざるを得ない、イオンの話には確かに力と実績がある。
ジェイドは自身の不純を思い出させられて尚続きがあると言い切ったイオンに、はっきりと動揺した・・・これがまだ続くのかと、そう言った愕然とした様子で。








10/25ページ
スキ