必然は偶然、偶然は必然 第十話

・・・だがもうそんな事をさせる気などルーク達には毛頭ない、そしてガルディオスに戻す気などそれこそ殺してでも有り得ない。だからこそ今この場で浮上することのないよう『ガイ・セシル』として、ルーク達はその立場に押し殺す・・・



「・・・なぁガイ。お前はファブレに仕える使用人だよな?」
「・・・あ、あぁそうだ・・・」
「・・・そうだぁ?はぁ?この期に及んでまだタメ口かよ、おい」
「っ・・・!」
中々言葉の出ないガイ。そこに一つ問いかけを入れるルークだったが、心底からルークはタメ口で話していいと思っているのかタメ口で動揺して返すガイに素で苛立ちそれを指摘する。その声に流石に今までの流れから失敗だと気付いたガイはハッとするが、今更態度を改めようとしたところで遅すぎる。



「・・・もういい、お前には幻滅した。父上に判断を委ねるまでもねぇ、俺直々に辞令を下してやる・・・ガイ、お前はファブレの使用人はクビだ」



「なっ・・・!?」
・・・本来ならもう少し追い詰めた後宣告する予定だったが、懲りる様子を微塵も見せないために即刻でルークは宣告した。ファブレを追い出すとかつて自身に向かって言ってきた幻滅と言う言葉を意趣返しに使いながら。



ルークから明確に自身を切り捨てる言葉を向けられ、ガイは驚きながらもすがるような視線を浮かべた。その視線にここでまたガイに喋らせれば余計に時間がかかると見たルークは更に追い討ちの言の葉を紡いでいく。
「今までの一連の流れはきっちり父上に報告させてもらう。流石に今までは事を荒立てたくなかったから大目に見てやったけど、イオンの導師としての判断にいちゃもんつけるなんて使用人としての分を越えすぎたからな。これを全部知ったらまず父上は許さねぇぞ、使用人としてあるまじき行為だってな」
「ま、待ってく・・・ださい。それは、それだけは・・・!」
そこから紡がれた公爵と言う言葉に復讐を誓った相手から離れる訳にはいかないと思ったのか、ガイはまた敬語を言い間違えそうになるのを抑えながら止めてくれと嘆願する。
「何でだよ、俺は雇われる側じゃなくて雇い主側だ。更に言うなら俺を担当するのがメインの役割で、お前の勤務態度を判断するのが一番近い所にいる俺なのは当然。つまりお前を辞めさせる権利は俺にあるのは明白で父上に勤務態度を報告する権利があるのは当然なのに、それをちゃんと出来ないお前に非難される謂れは全くねぇよ」
「・・・っ・・・!」
「・・・それに、だ。俺がこの場でクビって宣告しなくてもバチカルに戻りゃ確実に父上からクビ、いや下手すりゃ死刑すら宣告されてもおかしくねぇぞ」
「・・・え?」
だが一切取りつくシマを見せない雇用側として正しい言い分にガイは復讐の炎を目に浮かべかけるが、ルークはまた別のガイにとって最悪のシチュエーションを上げその目をキョトンとした物に変えた。



・・・だがその話こそ更なるドン底への墜落の誘導だとガイは気づけず、ルークの話を待つ。







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