必然は偶然、偶然は必然 第十話

「・・・つー訳だ。今お前がこうやって捕らえられている理由は導師に対する不敬だな。まぁダアトのやり方に対し色々言ったってのを合わせりゃ、越権行為ってオマケにゃ程遠いオマケが付いてくるけどな」
「そ、そんな・・・俺は、そんなつもりじゃない・・・そんなつもりじゃあ・・・」
「今更何を言ってんだ、お前?散々不敬をやらかしてばっかいたくせに・・・俺に」
「えっ・・・?」
そんな味方もないガイに実質的な罪状を告げればその重さにわざとじゃないと首を振るが、そもそもからの問題をルークは上げていく・・・前の自分では絶対にガイに向けなかっただろう、触れる余地もない程に冷めた目を乗せて。
「お前、屋敷にいた時から大抵俺に対してタメ口だったじゃん。周りに人がいない時はな」
「そ、それは・・・お前も堅苦しいのは嫌だからそれでいい、って言ってたじゃないか・・・」
「あぁ、そりゃ言ったな・・・けどそりゃ、あくまでも屋敷の中での話だ」
そんなルークにガイは半ば押されながらも事実だろうと言えば、今のルークだからこそわかる論理を持って事実を認めつつも攻めていく。
「確かに俺はそういうことは言ったな、堅苦しいのは嫌いだとも言った。それで父上達のいない場所でならお前はそうすると言った・・・まぁ直訳すりゃ人の目のある場所じゃそんなことは出来ない、と言う事になるよな?お前の言葉通りならな」
「あ、あぁ・・・」
「ならなんでお前は俺がマルクトに飛ばされてセントビナーで再会した後、普通にタメ口で話しかけたんだ?」
「・・・え?」
「え?じゃねーよ。人の目ってもんがあったわけじゃん、こいつらって言う人の目がな。なのになんでお前は人の目もはばからず俺にタメ口だったんだ?答えろよ、その訳を」
「!・・・・・・それは・・・っ!」
ガイの言ったこと、その上でそれをやらなかった矛盾。ルークはそれらを上げて辛辣に言えば、ガイは何とか言い訳を探さんとするがキョロキョロ目が動く上に脂汗が一気に吹き出している事から何も思い浮かんでいないのは明白だ。



・・・ただそんな行動を取った理由を問いつめはしてるものの、ルークはそれが侮りから来てる物だと確信している。
(こいつは俺がファブレらしくないことを望んですらいる、それは言い換えりゃ貴族らしくないからって見てることの裏付けだ。だから向こうが大丈夫だ、なんて言ったから大丈夫みたいに思ってたんだろうな・・・コイツがガルディオスって貴族に戻って全くちゃんと出来なかったのって、こう言った楽観的な考え方があったからだろうな。ファブレに対しての復讐で自分が死ぬ事なんて考えていたような節が全くなかったしな、復讐関連の話題の時・・・)
自身を侮るその態度、その根拠を自身の中でまとめるルークは一層冷めた目でオロオロするガイを見る。



・・・自身に復讐者であることを明かした後何回か復讐に関しての話を聞いていたルークだったが、自身が失敗するようなビジョンを持った話を聞いた事がなかった。もちろんやる以上成功のイメージを持つのは大事と言えようが、自分に対しての馴れ馴れしさが度を過ぎた態度を分析した上で見たら『失敗するイメージより成功のイメージを持っている』というよりは『失敗する事を考えたことすらいない』と言った様子だとルークは見ていた。そしてそんな考えだからこそユリアシティでファブレ公爵を人質に取った時、ガイに迷いがなかったのはそう言った考え方が少なからずあったからこそあぁもやれたのだとルークは思っていた。自分は正しいんだから助かる、だからファブレ公爵に剣を向けて脅しても自分の主張を通せばいいんだと言うような勘違い極まりない事すら思っていたのだろうと。










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